総選挙与党惨敗を韓国メディアはどう伝えたか「安倍政治の弊害、石破首相に期待したけれど…」 澤田克己
自公連立与党の惨敗に終わった衆院選の結果を韓国メディアはどのように論評したのだろうか。韓国の新聞の多くは選挙結果を翌日の朝刊1面で「12年の『1強独走』終わる」(朝鮮日報)などと大きく扱った。一方で、選挙結果の確定を受けて論評できる29日朝刊の社説で取り上げた新聞は多くなかった。政局が流動的で見極めが難しいだけでなく、韓国内で与党の内紛激化など大きなニュースが続いている影響があるようだ。最大野党・共に民主党の関係者は「日本の首相が誰になるかは韓日関係に響くから関心がないわけではないけれど、国内ニュースが多すぎて……」と話していた。 ◇社説に取り上げた4紙を読み比べ 社説に取り上げたのは保守系の東亜日報、進歩系のハンギョレ新聞、中道の韓国日報、経済紙の毎日経済新聞だった。内容的に分けると、日韓関係への影響を懸念する東亜日報、安倍晋三元首相を批判する材料としたハンギョレ新聞、順調に進んできた日米韓連携への影響を案じる韓国日報と毎日経済新聞となった。 東亜日報は、裏金問題を巡る経緯や非公認候補への2000万円支給、経済政策への不満などといった敗因を指摘。「結局、石破首相は、国民が望む景気回復のための方策と政治改革について、国民が聞きたかったメッセージを打ち出すことができなかった」と断じた。一方、負の歴史にきちんと向き合うべきだという首相の持論を意識し、「今回の選挙結果によって、韓日関係が(石破政権発足時に)期待したほど早く改善されるのは難しそうだ」という懸念を示した。 日本から見ると「関係改善は十分に進んでいるのではないのか」となるが、韓国側の感覚は少し違うことが読み取れる。 10年あまりにわたって「最悪」と言われ続けた日韓関係は昨年、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が徴用工問題の解決策を打ち出したことで劇的に改善された。ただ野党からは「譲歩ばかりの屈辱外交」と攻撃されており、国民からも「日本が歴史問題でもう少し踏み込んだ姿勢を見せてくれてもいいのではないか」という不満が強い。そうした中で登場した石破首相に期待したけれど、という気持ちを素直に表現した社説ということになる。尹政権による対日関係改善を是とする保守派からも、こうした声が出るということは留意すべきだろう。