声優・磯部勉、「超音速ヘリ・エアーウルフ」は初めてのシリーズもの 「本物に乗れなかったのが唯一心残りなことですね(笑)」
1986年から1988年にかけて日本で放送された海外ドラマ「超音速ヘリ・エアーウルフ」が、9月8日(日)よりBS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)で放送される。ベトナム帰還兵のストリングフェロー・ホーク(ジャン=マイケル・ヴィンセント)が秘密裏に開発した攻撃用ヘリ“エアーウルフ”を駆使して、さまざまな事件を解決する本作。人間ドラマとともに描かれる迫力満点のアクションシーンも見どころの名作海外ドラマだ。日本語吹替版でホークの声を担当したのは磯部勉。時代劇などの作品にも多く出演している俳優であり、ハリソン・フォードやメル・ギブソンといった俳優の吹替も多く務めてきた。そんな磯部に、当時のことを含めた本作の思い入れや、作品の見どころについて聞かせてもらった。 【写真】甘いマスクで微笑むホーク役のジャン=マイケル・ヴィンセント ■オファーがあった時は「できません」と一度断ろうとした ――「超音速ヘリ・エアーウルフ」がBS松竹東急で放送されることを知った時の感想を教えてください。 40年近く前の作品なので、ただただビックリしました。「なんで今?」って(笑)。でも、自分が舞台をやった時に、楽屋口で「すみません。これにサインしてもらえますか?」って、この作品のパンフレットを持ってる方から声をかけられることが何度かあったので、いまだに人気のある作品なんだなって思ったりもしました。 ――磯部さんにとって、この作品にはどのような思い入れがありますか? 声優としては、この作品が初めてのシリーズものでした。それ以前に、映画「クレイマー、クレイマー」でダスティン・ホフマンの声を担当したことがあったのですが、本当に大変で、アフレコに全然慣れてなかったので僕だけで12時間もかかってしまったんです。皆さんにご迷惑をかけたので、「もうやりません」って言って、何年かやっていなかったのですが、次にお話をいただいたのがこの作品でした。また皆さんにご迷惑をかけてしまうと思ったので、所属する事務所の方に「できません。断ってください」って言ったんですけど、「せっかくお話をいただいたのだからやりなさい」って言われてやることにしました。 ――最初はあまり積極的ではなかったんですね。 はい。でも、やってみて良かったです。自分がうまくできたとかではなくて、この作品でご一緒させていただいた富田耕生さんや戸田恵子ちゃんにいろいろ教えていただいて、それがあったから今までやってこられた感じがします。そういう意味での思い入れの強い作品です。 ――ドミニク・サンティーニ役の富田耕生さんとのシーンが一番多かったと思いますが、富田さんはどんな方でしたか? 普段と現場で、何か発声する感じとかあまり変わらない方でした。包容力があって、気持ちの出し方が大きく、声を聞いているだけで僕自身癒される感じがあったので、富田さんの声はすごく好きでした。役的にもドミニク・サンティーニは、僕が演じたホークの親代わりのような存在で、僕にとっての富田さんもそういう存在でした。アフレコに慣れていない僕に「お前はいいよ。あのままでいんだよ」って褒めてくれましたし、その言葉に勇気づけられ、自信が持てるようになりました。とても大きなものを持っていらっしゃる方でしたね。 ■アクションの他に、チェロを弾くシーンなど“静”と“動”がある作品の作りが魅力 ――磯部さんが感じた、本作の魅力を教えてください。 主人公のホークがヘリに乗ってアクションとか戦闘をバンバンやるんですけど、時々、湖のところでチェロを弾いたりするシーンがあって、“静”と“動”があるんです。作品全体の作り方、構成がうまいなぁって思いましたね。それと、キャラクターが際立っていて、一視聴者として楽しく見られましたし、声をあてていても楽しかったです。 ――本作はヘリでのアクションシーンが大きな見どころですよね。 はい。そういえば、このヘリが日本に来るという話があったんです。「それに乗せてもらえるんですか?」って聞いたら、「いいですよ」って言われたのですごく楽しみにしてました。その予定の日に「荒川の土手に来てください」って言われたので行ってみたら、ラジコンのヘリコプターの大会が行われていて、ラジコンの“エアーウルフ”はいたんですけど、本物はいなくて。「本物は来ないんですか?」って聞いたら、予定が変更になってダメになったらしいんです。本物に乗れなかったのが唯一心残りなことですね(笑)。 ――“ホーク”を演じるにあたって、何か気を付けていたことはありますか? 画面を通して見た感じだと、ホークは非常に気難しそうな性格の男だと思いました。でも、アフレコの時に何か気を付けていたこととかは全然なくて…。というのは、まだアフレコ自体に慣れていなくて、ただひたすら一生懸命に「どうやったら他の皆さんとうまく混じることができるのかな?」ということだけを考えていたので、役作りみたいなことはあまりしていなかったです。何度かアフレコをやっていくうちに、「ああすればいいんだ」「こうすればいいんだ」というコツみたいなものが掴めるようになりましたね。それも、自分で考えたものではなく、周りの皆さんのやり方を見て学んだ部分が多いです。 ――アフレコをする中で徐々に慣れていった感じでしょうか。 そうですね。いや、でも難しいなと感じながらやっていました。“緊張しい”なんで、マイクの前に立つとガタガタ震えちゃったりするんです。「このまんまやってたらどうなるかな? 体に良くないんじゃないかな」って。緊張しいなのは、今も変わってないですね(笑)。 ――放送された当時、周囲の人からの反響はいかがでしたか? 放送が始まった頃に友人から連絡が来て、「お前がやるな」って言われました。「お前の声を聞いてると、その顔が浮かんでしまうから面白さが半減する」って。そればっかりはしょうがないですよね(笑)。でも、「話はすごく面白い」って言われたのでホッとしました。 ■吹替で重要なのは、俳優の話すトーンや間合いを掴むこと ――洋画の吹替とアニメのアフレコではどのような違いがありますか? やはり演じている俳優がいるわけですから、吹替にしてもそれを無視したくはないですね。なるべく元々の俳優の特徴をキチっと捉えて日本語にしていくようにしたい。そんな気持ちでずっとやってきています。そう思ったのもこの作品があったからだと思っています。富田さんにしてもアークエンジェル役の家弓(家正)さんにしても、まるでその俳優さんがしゃべっているように自然なんです。「うまいなぁ。どうしたらそんなことができるんだろう?」って、当時、そんなことを思ったりしました。 ――メル・ギブソン、ハリソン・フォード、チョウ・ユンファといった俳優の作品を多く吹替されていますが、特徴を捉えると演じやすくなるのでしょうか? メル・ギブソンだったらこの声、ハリソン・フォードだったらこの声、というのはないんですが、リズムとか呼吸とか、何かそういうのがあるんです。いくつも作品を吹替していると、予測できるようになるという感覚はありました。セリフを喋るトーンとか、間合いとか、長くやってるうちにそういうのを掴めるようになったと思います。 ――最後に、今回の放送を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。 私にとって記念すべきシリーズもの第1号なので、思い入れは強いです。40年くらい前の作品ですが、ヘリコプターがメインのアクション作品というのは最近の作品も含めてあまりないと思うので、とにかく新鮮に感じてもらえると思います。頭を空っぽにして見てもらえれば、面白さも倍増するんじゃないでしょうか。ぜひご視聴ください。 ◆取材・文=田中隆信
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