20歳から免疫力は低下していく…高齢者がメタボ対策よりもしないといけないこと
◇高齢者はメタボ対策よりも「フレイル」対策 近年「フレイル(虚弱)」という言葉がよく使われるようになりました。フレイルとは「加齢により心身が老い衰えた状態」のことで、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間を意味します。 健康に戻れるか、介護・寝たきりへと進んでしまうのかの分岐点ということもできます。 フレイルには3大要素があるとされています。 身体的なフレイル栄養が足りておらず、筋肉が少なくなった状態。足腰の筋力が衰えて、立ったり歩いたりするのがつらい状態で、転倒を繰り返すこともあります。食べ物を飲み込みにくくなったり(嚥下障害)、ものを食べづらくなったり(摂食障害)すると、一気に身体的に弱くなります。 精神的なフレイル認知機能・意欲・判断力などが低下したり、軽度のうつ症状になったりする状態。 社会的なフレイル人との関わりがなくなって、閉じこもりがちになり、孤独感が深まるような状態。 このような要素が重なりあうと、自立して生活する力が下がって、フレイルの状態が加速してしまいます。では具体的に、どのような状態になったらフレイルと判定できるのでしょうか。 フレイルの基準は複数ありますが、一般にはリンダ・フリード氏が提唱した次の基準が用いられることが多いようです。 ・体重減少 意図しない年間4・5キログラムまたは5%以上の体重減少 ・疲れやすい 何をするのも面倒だと、週3~4日以上感じる ・歩行速度の低下 ・握力の低下 ・身体活動量の低下 ここでもっとも注目したいのが体重減少です。中年期まで成人病対策や、メタボリックシンドローム対策として、肉類や炭水化物を制限し、体重を減らすことが健康だという意識でいる人も多いのですが、高齢になってからは意識して体重、特に筋肉量を増やすことに意識を転換する必要があります。 フレイルは急性のけがや病気による入退院をきっかけとするケースなどもありますが、多くは生活環境の変化などにより、少しずつ進んでいきます。その主な原因として次のようなものがあげられます。 ・加齢に伴う活動量の低下と社会交流機会の減少 ・身体機能の低下(歩行スピードの低下) ・筋力の低下 ・認知機能の低下 ・易疲労性や活力の低下 ・慢性的な管理が必要な疾患(呼吸器病、心血管疾患、抑うつ症状、貧血) ・体重減少 ・低栄養 ・収入・教育歴・家族構成など ◇健康長寿を実現するために必要な4つのポイント 高齢期を迎えるにあたり、いかにフレイルを予防するかを考えることは、健康長寿を実現するために非常に重要です。以下にフレイル予防のポイントを列挙します。 運動で体力を維持するフレイル予防の最重要点は、筋肉量を減らさないことです。運動によって筋肉を積極的に使い、むしろ筋肉量を増やすことを目標にしましょう。といっても、無理は禁物です。けがをしてしまっては、まったくの逆効果ですので、慎重さも重要です。基本は歩くこと。楽しんでウォーキングに取り組みましょう。意識して動かすことで何歳からでも筋力アップは可能です。 栄養状態を良好に保つバランスよくいろいろな食品を食べるのは基本中の基本。なかでも意識して積極的に摂るべき栄養素は、筋肉を作る材料「タンパク質」です。肉・魚・大豆・卵・乳製品に多く含まれています。1日3食、生活のリズムを保って食事することが大切です。 1回の食事で十分な量が食べられない場合は、間食もOK。ヨーグルト・魚肉ソーセージ・かまぼこ・サラダチキン・小豆(和菓子)などがおすすめです。 社会と交流する孤立すると意欲が低下し、精神的に何もやりたくなくなってしまいます。常に誰かと会話ができるように、ボランティア活動をするなど社会参加をする機会を作り、人との交流を保ちましょう。もしも、孤立が避けられないとしても、毎日、朝日を浴びて、好きなことをして、意欲的に毎日を過ごせるようにしましょう。 口腔ケアをする栄養をとったり、呼吸をしたり、コミュニケーションを取ったり、口には大事な働きがあります。口腔の体操を取り入れ、舌・くちびる・ほお・のどの筋肉を意識して鍛えることで、飲み込み機能の維持・向上をはかり、むせ・誤嚥を防ぎましょう。肉など噛みごたえのある食品を食べるには、歯や歯茎の健康も重要です。
飯沼 一茂