芽キャベツに勢い 大手外食「春の旬メニュー」に 栽培面積も拡大
ころんとした形が目を引く芽キャベツの消費が好調だ。国内生産量の9割を占める静岡県の主産地を中心に販促活動を積極展開してきたことなどが奏功し、知名度は向上。大手外食チェーンが春の旬メニューに投入するなど追い風が吹く。 【データで見る】芽キャベツの収穫量は10年で1.2倍に
産地が積極的に販促
芽キャベツはキャベツの変種で、わき芽が結球したもの。国内の作付けは2022年産が34ヘクタール、収穫量は361トンで、10年前からともに2割伸びた。小さな球が柱状に密集するその独特な見た目は、交流サイト(SNS)にアップされるたびに注目を集め、知名度を高める強みにもなっている。 球の直径は約3センチで、夏の定植後、11月下旬に収穫が始まり、年明けに最盛期を迎える。1株当たり50を超える実をつける。栄養面ではビタミンCやカリウム、葉酸、ビタミンKなどが豊富。中でもビタミンCはキャベツの4倍、食物繊維は同3倍含まれる。 知名度の高まりを背景に、全国展開する大手外食チェーンが春野菜のメニューに採用する動きが出ている。居酒屋「塚田農場」などを運営するエー・ピーホールディングス(東京都豊島区)は今春、芽キャベツを使ったメニューを提供した。きっかけは、2023年に産地の静岡県菊川市との企画で、全国の約50店舗限定で扱ったことだ。揚げたこ焼き風にするなどアレンジした2品を含む企画メニューは、開発者が「家庭では作れないような、ひとひねりした料理」を目指して農家と考案した。同社は25年も芽キャベツを使うことを検討しているという。 ちゃんぽん店を展開するリンガーハット(東京都品川区)も23年、芽キャベツを初めて使った期間限定メニューを全国約600店舗で提供。「春野菜のクリームちゃんぽん 明太子添え」は、彩りやヘルシーさで好評を得た。同社によると、過去には食育事業で活用したこともあった。
実が軽く省力化も
国内生産量の9割を占める静岡県では、JA遠州夢咲管内での栽培が盛ん。産地化が進んだ背景には、雪が降らず、「遠州の空っ風」と呼ばれる風が吹き乾燥する気候が適していることや、実は小さくて軽いため収穫が楽など省力的なことがある。現在、48戸が延べ21・8ヘクタールで栽培する。 JAは、スーパーなどの店頭に鉢植えを置き、“畑の姿”でPR。レシピ紹介ではスープやシチューの他、天ぷらやホイコーローなどへのアレンジも提案し、多様な調理方法を浸透させている。 栽培7年目という御前崎市の渥美典彦さん(66)は「収穫や調製作業は根気がいるが、力作業が少ない」と話す。単価は良く、長期間の安定収入が見込める点も魅力という。
日本農業新聞