スペインの五輪招致失敗から見える次の問題
スペインのスポーツ界は暗い未来へ進んでいる
また、「三回目のマドリードオリンピック招致失敗は、スペインスポーツ界にとって暗い未来へ進んでいる」というヘッドラインを掲載したマルカ紙は、今後の招致活動の継続問題について緊急アンケートを実施した。つまり、2024年の招致に立候補するかどうかの問題だ。 そのアンケート調査によると、「2024年の開催地立候補をすべきか」、という質問に対して、約77.5%の人(約2万人)が、「望んでいない」と、回答した。「継続すべき」と答えたのは、22.5%しかなかった。同紙は、北京オリンピック、フェンシング男子銅メダル獲得のホセ・ルイス・アバホの「もう立候補することをやめなければならない」というコメントを掲載して、招致活動の終結を訴えた。2024年は2016年の招致に失敗したパリが再び立候補して最有力と言われている。確かに同じ欧州のマドリードは、不利なのかもしれない。 マルカ紙は、今回の招致失敗の総括を「非常に複雑である。通常悲しみに暮れるものだが、北マリアーノ・ラホイ大統領は『この結果を私たちは好意的にとらえることができない。しかし人生において、スポーツだけではなく、勝つこともあれば負けることもある。政府はスペインスポーツにこれからも力をそそぐ』と語った。しかし、オリンピックへの道は閉ざされた。ある若い世代のスポーツ選手は、スポーツ奨学金を受けられず、実費で遠征を強いられている」と結び、最後にプレゼンテーションで演説したNBAのパウ・ガソルのこんな談話を紹介している。 「スポーツをする若い子供たちは、この先苦しむことは必至だ」 東京五輪招致成功で、日本全体が、まるで熱病のように浮き足だっているが、一方で、敗者のスペインは、こんな深刻な問題に直面している。 まるでフェスティバルのような様相で、2020年の五輪開催都市は東京に決定されたが、例え失敗しても、その招致運動を通じて、国内のスポーツ界になんらかのポジティブなものを生み出さなければ、それは単なる権利争いのコンペでしかない。敗れた都市のスポーツ界の未来が暗くなるような現状のオリンピック開催都市決定の手順、手法は果たして正しいのだろうか? (構成・本郷陽一/論スポ/取材協力/吉野正人)