「永遠に」「ひとり」で大ブレイクのゴスペラーズ、ヒットが出なかったデビューから6年間の苦悩と奮闘 「前例がないから自分たちで作り出した」
“全曲アカペラのアルバム”という新境地に挑戦。アカペラ制作は「すっごく大変!」
続いてSpotifyランキングを見ていくと、第2位には「ミモザ」(’04年10月リリース)、第4位には、アカペラで歌った「星屑の街」(’02年11月)がランクイン。この2曲はいずれも秋から冬にヒットしたバラード・シングルで、やはりライブの定番となっている。 黒沢「『ミモザ』は、たまたまタイアップの時期が秋冬だっただけで、自分としては(メンバーの)安岡 優に、“カクテルのミモザのイメージで詩を書いて”とお願いしていました。でも、花のほうのイメージが先行して、今では毎年、春になるとたくさん聴かれているみたいですね」 酒井「『星屑の街』は、アルバム『アカペラ』のリード曲です。『アカペラ』は前年に出した『ひとり』でアカペラが市民権を得られたことをふまえ、“今度はさらに扉をこじ開けて、全曲アカペラのアルバムを作ってしまおう”となったことで生まれたんです。このアルバムも売れたことで、それすら受け入れられる時代になったんだなと実感しました」 この頃、バラエティ番組を中心に、アカペラを競うようなブームがあったことも後押ししただろうが、アルバム1枚をアカペラで作って大ヒット(累計46万枚、03年度の年間アルバム22位)させたグループは彼らが初だろう。 黒沢「しかもほとんどがオリジナル曲ですからね。かなりの冒険だったので、今も自分たちの誇りになっています」 ちなみに、アカペラのアルバムが、通常の演奏入りよりどれくらい大変かと尋ねると、異口同音に「すっごく大変! (苦笑)」と返答があった。 黒沢「時間もかかるし、やはり使える音色が声だけだと、制限が出てきますから。例えば、誰か1人の声を多重録音してデモテープを作ったとしますよね。5人がかりでそれを超える出来にするのは、結構大変なんですよ。いろんな技を駆使するのですが、アルバムで十数曲もあるとなると、“あ、このテクニックは前の曲で使ったな”とか」 酒井「曲のほうも、“バラードを書いたら似てしまった”とか、手詰まりになってくるんですよ。今なら、アカペラのアレンジを専門としたYouTuberもいますが、当時は大した経験値もなく、すべて自力で行っていて。まるで家内制手工業のようでした(笑)」 彼らの話からは、ブレイクまでの6年間、さまざまな楽曲で苦労してきたことがひしひしと伝わってくる。だが、試行錯誤を重ねたからこそ、レパートリーが増えたり、楽曲制作ができるようになったりと、確実にパワーアップをしてきたのだ。近年は、一般社会においても、新人に早期から即戦力を求める傾向が強くなっているようだが、ゴスペラーズのこの6年間や、本年までの30年に渡って揺るぎない実力を培ってきたことを考えると、じっくりと人の成長を見守るような環境の大切さを実感させられる。 【インタビュー第2回】では、彼らの人気を支えるカバー曲について語ってもらおう。