米大統領選前にオクトーバー・サプライズはあるか?:イスラエルのレバノン地上作戦など地政学リスクにも注意
10月1日にイスラエルがレバノンの地上作戦を開始
イスラエルは10月1日に、レバノン南部で「標的を絞った」地上作戦を開始したと発表した。親イラン民兵組織ヒズボラの一掃に向けた行動をエスカレートさせたのである。 米国や欧州連合(EU)、アラブ諸国が停戦の呼びかけをするなかで、イスラエルは9月27日にヒズボラ指導者ナスララ師を殺害した。そして今回は、レバノン南部での地上戦に踏み切った。イスラエルはパレスチナ自治区ガザでのハマスとの戦闘から、レバノンでのヒズボラとの戦闘へと軸足を移している。 ネタニヤフ首相はレバノンのヒズボラ壊滅の目的について、ヒズボラによるロケット攻撃でイスラエル北部から数万人の住民が退避を余儀なくされており、これを終わらせることだ、と説明している。 米政府は、イランとの直接的な衝突をもたらしかねない、レバノンでの大規模で長期的な作戦は見送るよう、イスラエル政府に警告しているとされる。ただし、1982年のイスラエルによるレバノン侵攻も当初は限定的な計画だったが、最終的にはレバノン南部の一部を占領して2000年まで続いた。 ハリス氏は、親イスラエルではないとして、トランプ氏から批判を受けている。他方で、若年層を中心に国民からは、ガザ地区の紛争でイスラエル寄りの姿勢を批判されている。 今後、イスラエルのレバノン地上戦で一般住民の犠牲が増えれば、米国内でイスラエルへの批判がさらに高まり、それは大統領選挙でハリス氏に逆風となりかねない。今回のイスラエルによるレバノンの地上戦は、「オクトーバー・サプライズ」になる可能性があるだろう。
北朝鮮の7回目の核実験も
そして、もう一つ、「オクトーバー・サプライズ」の候補として警戒されている地政学リスクが、北朝鮮だ。 北朝鮮は9月12日と18日に弾道ミサイルを発射した。バイデン政権は、北朝鮮が11月の米大統領選挙の前にサプライズで挑発行動を行う可能性、つまり「オクトーバー・サプライズ」を警戒している。大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射や7回目の核実験のような大型挑発である。 韓国大統領府の高官、シン・ウォンシク国家安保室長は、北朝鮮は核の小型化を実現するために数回の核実験が必要であり、金正恩総書記の判断次第でいつでも核実験を行える状態にある。11月のアメリカ大統領選挙の前後に北朝鮮が核実験を強行する可能性がある、という見方を示している。 また同氏は、総書記によるウランの濃縮施設の視察が9月に発表されたことは、北の核に対する国際的な関心を高め、アメリカ大統領選挙に前後して彼らの影響力を高める狙いがある、と指摘している。 米大統領選挙を直前に控えた10月は、地政学リスクが一気に高まるなど、世界規模での「オクトーバー・サプライズ」になる可能性もあり、注意が必要だ。 (参考資料) 「終盤戦の「オクトーバー・サプライズ」=米大統領選の結果左右も」、2024年10月1日、時事通信ニュース 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英