【もつ焼きソバ】ラストオーダー間際に滑り込んだ酒場にて、生まれて初めての麺を使った絶品おつまみ焼きそばに出会う:パリッコ『今週のハマりメシ』第144回
続々と届く料理たち。なにしろ久しぶりに食べるまともな食事。空腹は最高のスパイスとはよく言ったもので、どれもこれもありがたみの極まった味わいだ。 肉々しいハラミポン酢の柔らかくもしっかりとした歯ごたえ。噛めば噛むほどに肉の旨みが湧き出してきて泣けてくる。 とんそくは、珍しく荒めの塩をつけながら食べるタイプ。煮込み系や、焼きに酢醤油をつけて食べる福岡スタイルは食べたことがあったが、むちむちとした食感と強い旨味をシンプルな塩が引き立ててくれ、酒のつまみとしては最上級だ。 濃厚な味噌ベースのとろとろ煮込みのうまさなど、食べなくても見るだけでわかる。たっぷりの量とその下の豆腐が嬉しく、実際、見た目の想像をさらに超えてうまい。 そしてしっかりと漬かったぬか漬けを噛み締めた時の、塩気が体に染み込む感覚。もはや言うことはない。 どれもこれもホッピーとの相性抜群で、「いや?疲れましたね」「でも楽しかったですね」なんて、何度も言い合いながら飲む時間が、幸せこの上ない。 そしてそしてやって来たもつ焼きソバが、ちょっと意外なビジュアルだった。 まずはとにかく気になるのが、麺。今まで食べたどの焼きそばよりも、圧倒的に"ストレート"。もはやパスタのようにも見える。 とにかく皿に取り分け、食べてみよう。勢いよくズズっとすすると、表面がほんのり焦げるほどに焼いてあるから、若干パリッとした歯ざわりがあって、そのあとにぷりぷりもちもちと、口のなかで踊りだす。これ、やっぱりパスタだろう。どう考えても。 全体的な味つけは強めの塩味がベースで、そこにキャベツとにらが甘味としゃきしゃきを加え、かつお節が華やかに香る。で、豚もつと思われる細かめに刻まれた肉がたっぷり。これがまた、風味的にも食感的にもいい仕事をしている。 で、肝心の麺の感想はというと、正直、めちゃくちゃ合う。ふだんからおつまみレシピのアイデアばかり考えている僕からすると「やられた!」って感じだ。なんで今までこれを思いつかなかったんだろう。 食感にメリハリがあるから、口に運ぶのが少量ずつでも満足感があり、酒のつまみとして見たときに、戦闘力が高いのだ。食事としてならば通常の中華麺焼きそばに分はあるかもしれないけれど、酒の隣にいてほしいのはこっち。まさに、酒場の焼きそばだ。それでいて炭水化物。久々の炭水化物が体力をぐんぐん回復してくれる。 なんてことをしていたら、あっという間にドリンクもラストオーダーの時間。ナカをおかわりしたホッピーが少し残っているけれど、ここで頼まないわけにはいかないと、いも焼酎「さつま島美人」(550円)をロックで追加する。 これを閉店までの15分でしっかり堪能し、トータル40分ながら、濃密で充実の打ち上げタイムが堪能できたのだった。 取材・文・撮影/パリッコ
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