滅ぼし滅ぼされの歴史は日本にも…慈悲と寛容と平和を“宗教”が国家対立の中で暴走するワケ
■宗教を利用することを抑制する仕組み したがって、「慈悲」「寛容」「平和の実現」「平等」といった宗教に通底する理念を、政治利用されない仕組みづくりが必要になる。翻って、宗教の本質に立ち返りさえすれば、紛争の解決への道を見出せる、ともいえる。 そのためには、異なる宗教間の国際対話の場がとても重要になってくる。相互理解を深めるとともに、宗教指導者や政治家が宗教を利用することを抑制する仕組みを構築しなければならない。 宗教間の国際対話の場としては、世界宗教者平和会議(WCRP)がある。これは1970年に京都で発足した世界最大の諸宗教間対話組織である。この会議は、宗教を超えた対話を促進し、平和のための宗教協力を目的にしている。2024年7月には国際会合が広島で開催された。だが、世間一般でWCRPの存在はほとんど知られていない。認知度を高めていく努力が必要だ。 宗教戦争の歴史は長く、その原因や構造を理解することは難しい。しかし、先にも述べたが宗教の本質的な教えに立ち返れば、平和的共存の道を見出すことができるはず。宗教が持つ平和と慈悲の精神を活かす、新たな仕組みづくりが求められる。 ---------- 鵜飼 秀徳(うかい・ひでのり) 浄土宗僧侶/ジャーナリスト 1974年生まれ。成城大学卒業。新聞記者、経済誌記者などを経て独立。「現代社会と宗教」をテーマに取材、発信を続ける。著書に『寺院消滅』(日経BP)、『仏教抹殺』(文春新書)近著に『仏教の大東亜戦争』(文春新書)、『お寺の日本地図 名刹古刹でめぐる47都道府県』(文春新書)。浄土宗正覚寺住職、大正大学招聘教授、佛教大学・東京農業大学非常勤講師、(一社)良いお寺研究会代表理事、(公財)全日本仏教会広報委員など。 ----------
浄土宗僧侶/ジャーナリスト 鵜飼 秀徳