ラグビー日本代表は、なぜテストマッチ10連勝を成し遂げたか
ラグビー日本代表は6月21日、東京は秩父宮ラグビー場でイタリア代表を26-23で史上初めて下した。ランキング上は日本代表が12位でイタリア代表が14位だが、イタリア代表は欧州6強による「シックス・ネーションズ」でウェールズやフランスらとしのぎを削っている強豪国だ。トップレベルでの経験値は日本代表を上回り、特にフォワードは大きくて強い。 高温多湿のスタジアムで互いに落球を重ねるなか、日本代表はスクラムで概ね優勢だった。スクラムは、最前列(フロントロー)で組む3人の仕事が大切だと思われがちだが、現代のラグビーでは2列目以降の5人の押し込みも重視されている。現在のジャパンも、フォワード8人がいつでも低くまとまっている。例えば、前方の3人が右斜め前45度に身体を動かしたら、残りの5人も右斜め45度に圧力をかける。左プロップで先発した三上正貴は言う。「後ろが押すのが当たり前になっていて、(最前列の)プロップとしてはやりやすいです」。 ジャパンを率いるエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)をして「人生をかけてスクラムを組んでいる」というイタリア代表が上から押しつぶそうとしたり、左右に揺さぶろうとしても、その意志は概ね不変だった。 後半19分の決勝点も、起点はスクラムだった。敵陣22メートルエリア右の密集を右から押し込み、ナンバーエイトのホラニ龍コリニアシがボールを拾って直進。ここからスタンドオフの立川理道が中心となって左に、右に、左に、ボールを動かす。3分間の連続攻撃のさなか、その直前までスクラムを組んでいたフッカーの堀江翔太副将が、左大外へロングパスを放った。球をもらった俊足ウイングの福岡堅樹は、中央へ切れ込む。するとその先のアタックで、堀江はゴールラインの手前まで突っ込む。ラックとなったスクラムハーフの田中史朗は、一気に右へパスアウト。最後は、センターのマレ・サウがインゴールを駆け抜けた。 試合直前のウォーミングアップの途中、左の腰周りを痛めていたはずだったが…。「痛かった。でも、メンタル、メンタル。ゲームに入っていた」。ここで24-16。フルバックの五郎丸歩副将のコンバージョン成功で、点差を26-16と広げた。 ノーサイド。チームは昨年から通算して、テストマッチ(国同士の真剣勝負)での10連勝を成し遂げた。途中、二軍といえど苦手な南太平洋諸国のサモア代表を秩父宮で下し、敵地に渡ってのカナダ代表戦、アメリカ代表戦でも白星を得ている。