ラグビー日本代表は、なぜテストマッチ10連勝を成し遂げたか
アジア五カ国対抗でワールドカップ出場権を勝ち取るなどした今春のツアーは、22日に解散する。以後、夏場の合宿や秋の遠征が予定されているが、ターゲットは、2015年の秋にイングランドで開催されるワールドカップでの準々決勝進出(決勝トーナメント)である。予選プールBでは、世界随一のパワーを誇る南アフリカ代表、昨秋に17-42で敗れたスコットランド代表、今度はベストメンバーが揃うはずのサモア代表、本大会では一丸となる傾向が強いアメリカ代表と対戦する。 2012年春以来、ジョーンズHCが勝利に必要だと感じたメソッドは、ひと通り揃ったはずだ。この先は、立川の言葉を借りれば「ジャパンのこのラグビーの精度を上げていく」だけだろう。ジャパンの選手は、ジャパンの方針を信頼している。それは強みとなろう。 もっとも、テストマッチ10連勝と、登り調子の状況だけに、些細な課題は見落とさずに歩みたいところか。例えば、選手個々の意識のギャップ。今春はプレーで引っ張るフランカーのリーチ・マイケル主将のもと、複数の選手がリーダーシップを張れるようプレイヤーズミーティングを重ねていた。その成果は出ている。ずっと代表でプレーする選手は、口々にそう語っている。 しかし、南半球最高峰のスーパーラグビーでプレーするスクラムハーフの田中はやや反対の立場を取っていた。昨年6月に欧州王者だったウェールズ代表を破った時と比べ、「まとまりがないのかな」と。「新しいシステムが入って、チームのコミュニケーションのあたりが完全ではないかなと」。「僕の勝手な思い込みですが…。メンバーが固定されてきてリザーブやノンメンバー(試合に出ない人)が練習を100パーセントでやっていないと感じる部分もありますし。これはリーチを通して言っていることなんですけど。また日本人の悪い癖が出ている」。 辛口で鳴らす田中の発言だ。この人が6月の北米遠征からチームに合流したことも鑑みると、これら言質を真実とするのはややネガティブかもしれない。ただ、リーチ主将はいまでも悔やんでいる。2011年のニュージーランドワールドカップで試合中の選手同士の課題改善が不十分だったことを。そうした経緯を踏まえると、次の合宿時の議題に「(選手間の)まとまり」、「日本人の悪い癖」を上げても悪くはなかろう。 (文責・向風見也/ラグビーライター)