<掛布が語る>阪神と巨人 ゲーム差2.5の間にあるもの
巨人が自作自演していたとも言える混セのペナントレースに自らがケリをつけて走り始めたように見える。終戦記念日の15日は巨人が敵地で3位のカープを粉砕、阪神も横浜DeNAに一度は追いつかれながら8回に上本の走者一掃の決勝タイムリーで突き放して勝ったが、内容を見ると同じ1勝でも意味合いが少し違う。 巨人はエースの内海が141球の熱投で3勝目を記録、マエケンの失投を坂本、ヨシノブが見逃さずに仕留めてKOした後、前日はバントのサインを出されて物議をかもしだした4番の阿部も追撃の一発。原監督が待っていた主力のバットにようやく集中力が出てきた。 私は14日の巨人―阪神戦での坂本、井端のボールの見極めや、その粘り強いバッティングに凄まじいまでの集中力の高まりを感じたが、その集中力こそが、巨人の自力であり、チームのカタチが生まれてきた象徴である。今季は、ここまで不振だった内海にしても、本来は、投手陣の精神支柱的な投手。そのリーダーに白星がついたことは、チームの自信と勢いに変わっていく。原監督は「意義のある8イニング」とコメントしていたが、阪神戦の2勝1敗、そして広島戦の緒戦の勝ち方は巨人にとって理想的なゲームだった。 一方の阪神は連敗を止めたが、私が後半戦のキープレイヤーに挙げていた能見には勝ち星がつかなかった。6回に突如、崩れて3失点。1点差にされると7回からマウンドに上がった安藤が、そのリードを守りきれない。阪神のウイークポイントであるオ・スンファンにつなぐまでのイニングにまた不安を露呈した。 打線の方も、この日は、右の井納に対して今成、福留、伊藤隼太を使ったが、14日の巨人戦では、左のセドンに対して関本、新井良を打線に並べるなど、チームのカタチがコロコロと変わりすぎているのが気になる。左右のピッチャーに対して、毎試合、まるで違うチームが戦っているようである。現在の野球は、コンディションなどを配慮しながら1、2軍の70人をいかに使って戦うかが重要になっている。おそらくベンチは、そういう意識で相手チームとの相性などを見ながらスタメンを決めているのだろうが、ぶれない指針がなければ、チーム力というものは構築されていかない。そう考えると横浜DeNAの相次ぐミスに助けられて手にした阪神の1勝と、広島に圧倒した巨人の1勝では、同じ1勝でも内容と次につながる材料に差があるように思える。そして、その差が、2.5差の中身というわけである。