フランス債の安全神話崩れる、利回りはイタリア債に急接近
(ブルームバーグ): フランス債の安全神話が崩れつつある。10年余り前の欧州債務危機で問題になったアイルランドやポルトガル、スペイン、ギリシャの利回りをフランス債は今や、上回る。
フランスの政治危機が長引く中、同国の借り入れコストは近く、放漫財政の伝統的な象徴であるイタリアを上回るのではないかと、誰もが気にしている。1年前は考えられなかったことだ。
バルニエ首相が今週、2025年度予算案で譲歩し、フランス債はある程度落ち着きを取り戻した。譲歩は政府崩壊につながりかねない内閣不信任決議を回避するための措置だ。しかし長期トレンドは顕著で、10年物のイタリア、フランス両国債の利回り差(スプレッド)は既に40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)未満と、9月時点のほぼ半分に縮小した。
メディオラヌム・インターナショナル・ファンズの債券責任者、ダニエル・ラフニー氏は「絶対にないということはない」と述べ、「フランスのエリートらに何か行動を起こさせるには、同国債利回りがイタリア債に近づく必要があるかもしれない」と続けた。
今年半ばまでフランス債は、欧州で最も安全な資産とされるドイツ債の代替にほぼなり得るとみなされていた。だが、マクロン大統領が6月に総選挙を決定した結果、どの勢力も政権樹立に必要な過半数議席を獲得できず、フランスは危機に陥った。今年の財政赤字は対国内総生産(GDP)比で6.1%に膨れ上がる見通しだが、政局混迷で赤字抑制の取り組みもままならない状況だ。
フランス10年債利回りは3%付近で、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、アイルランドよりも高い。それでもイタリアと同水準になれば、象徴的な意味合いはこれまでで最も大きい。政治危機が繰り返され、GDPのおよそ140%に上る債務の抑制も進んでいないイタリアの債券は、伝統的に域内で最もボラティリティーが高い。
みずほインターナショナルのストラテジスト、エブリン・ゴメスリヒティ氏は、フランス債利回りがイタリア債に並べば、「重大なシフトだろう」と指摘。「イタリアはスペインや他の周辺国と比べ、債券市場が大きい。従って、この意味でより比較しやすい」と述べた。