「あんな田舎に埋まるつもりはない!」「お前、曲がりなりにも長男の嫁だろ?」田舎の墓じまいで揉めに揉めている50代夫婦の「暗すぎる老後」
様々な終活スタイルが脚光を浴びているが 、墓を閉じるという選択肢もそのなかに含まれている。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。 「お墓が遠方にある、後継者がいない、さまざまな理由があると思います。相次ぐ地震で、お墓が倒れたなんて報道も出ていましたが、お墓の維持は物理的にも金銭的にも、簡単ではありません。今は樹木葬や散骨など、選択肢が増えたことで、墓を新たに設けなくてもよくなったという側面もあるでしょう。仏壇を持たない人も多いと聞きますし、弔い形も変化をしているんですね」。 人が亡くなった後にかかる費用についてもさまざまな考え方がある。 「お葬式代、戒名、お某さんへの諸経費とお金がかかるのが現実。お墓に名前を掘ったり、骨壷をお墓に入れるためにもお金がかかります。賃金が上がらない苦しい経済のなか、亡くなった人ではなく、生きている人のためにお金を使いたい、使わせたいと思う気持ちもわかりますよね。実際、親としてみれば、子どもにそこまでの負担をかけられないと思う人も多いことでしょう」。 変わりゆく墓との向き合い方。今まさに、悩みを抱えていると話すある男性に話を聞いた。 -----------------
武田久さん(仮名・59歳)は、都内に勤める会社員だ。実家には墓があり、祖父母、他界した父がそこに入っている。 「田舎では、墓はある種のステイタス。父は墓を建てたことを誇らしげに話すほどでした。姉がいますが、私は長男なので常々、墓を頼む、家を頼むと言われ続けてきました」。 大学卒業までは、実家に帰ってくることを切望されていたらしい。 「私自身、帰るつもりはありませんでしたが、特に父は帰ってきて欲しいという気持ちがあったんじゃないかな?何度も、何度も言われましたから。ただ、実家に戻ったとて、仕事が潤沢にあるわけではありませんし、私自身もやりたいことがあったので、そのまま東京で就職をしました」。 恵さんと出会い、結婚。子どもを2人を育て上げ、気がつけば目前に退職が迫っている。 「この後も働くつもりですが、一旦、ゴールといった感じですね。これを機に今後の親の面倒、さらには墓についても考え始めました。このときは漠然と家族みんなうちの墓に入ると思っていましたね」。 久さんにとっては、墓に入ることはあまりにも当たり前で疑いの余地はなかった。 「祖父母、父もその墓に入っていますし、父、いずれは私たち夫婦…と代々続いていくものだとあまりにも自然に思ってしまっていたんです。読みが甘かったですね…」。 ところが、妻はきっぱりこう話したという。
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