芸能プロダクション破産に見る演劇界の厳しい現状
■”舞台に強い事務所”の破産の衝撃 老舗芸能プロダクション「アトリエ・ダンカン」が2月1日付で事業を停止し、自己破産申請の準備に入ったことを帝国データバンクが明らかにした。 1979年に設立された同プロは女優・木の実ナナや歌手で俳優の尾藤イサオ、ミュージカル俳優・山崎育三郎らが所属。過去には萩原健一、森公美子、森山未來、「AKB48」の片山陽加、佐藤亜美菜らも在籍していた。タレントのマネジメントのほか、「SHOW GIRL」や「ACT泉鏡花」「志村魂」などを手掛けるなど舞台やミュージカルの製作にも力を入れており、業界内では“舞台に強い事務所”として一目置かれていた。 ■舞台公演を取り巻く厳しい現状 だが、最近は舞台公演での赤字が続き、2014年1月には同プロがプロデュースし、今月から上演予定だったROCKミュージカル「ピンクスパイダー2014」の公演中止を発表するなど、苦しい経営状況が続いていたようだ。そんな中、今回の事業停止で浮き彫りになったのが、舞台公演を取り巻く厳しい現状である。 現在、裁判が行われているモデルで女優で歌手の土屋アンナの主演舞台「誓い~奇跡のシンガー」の降板騒動だが、同舞台の監督を務める甲斐智陽氏が提出した訴状によると、土屋のギャラが210万円だったことが明らかになっている。土屋クラスのタレントであれば、CMなどに出演すれば数千万円単位のギャラを手に入れられるはずで、本番だけでなく稽古なども含めた労力や時間的な制約を考えると、あまり割りの良い仕事とは言えない。 ■若手歌舞伎役者は月収20万円以下も 演劇関係者は語る。 「今回の土屋さんのケースは、舞台の原案となったとされる本の著者に対する特別な思いもあって割安になったのかもしれませんけど、総じて舞台の出演料はCMやドラマなんかと比べると格段に安い。舞台で1000万円を超えるようなギャラがもらえるケースなんてほとんどないんじゃないですかね。誰もが知る有名劇団でさえ、若手劇団員はチケットを手売りしているような状況ですし、歌舞伎役者さんでも“三回さん”と呼ばれる脇役だと月収20万円以下なんて人もぞろぞろいますから」