芸能プロダクション破産に見る演劇界の厳しい現状
■ギャラが安くても儲からない チケットも売れない 出演者のギャラが抑えられることで、主催者サイドが儲かる仕組みなのかというと、決してそうではない。 「良いものを作ろうと思えばそれだけ製作費はかかるし、人手もかかる。備品や衣装代だってバカにならないし、劇場の規模によって多少の差こそあるとはいえ、映画やコンサートなどとは異なり、1回の上演で何千人、何万人規模の客を集められるものではないですからね。それに、最近はそもそもチケットが売れない。演劇や舞台を見に来てくれる人も減っていますし」(前出の演劇関係者) ■勝ち組だった歌舞伎界さえも危機感 かつては“演劇界の勝ち組”とされていた歌舞伎界ですら、昨今は客入りの不調に危機感を抱いているという。実際、“聖地”と言われる歌舞伎座こそ、連日賑わいを見せているものの、他の劇場での公演に関しては空席も目立ち、苦戦を強いられているとか。 歌舞伎界といえば、一昨年12月に中村勘三郎さん、昨年2月に市川團十郎さんと、大物が相次いで亡くなった。そのことも大きな要因の一つではあるのだろうが、別の理由もあるという。芸能評論家の三杉武氏は語る。 「景気に左右されていることもありますが、客の高齢化問題というのも大きいと思います。タニマチと言われるスポンサー筋や常連客が高齢化し、直接足を運ばなくなったり、チケットがさばけなくなるという現象は、歌舞伎界に限らず、演劇やコンサート、相撲、プロレスといったいわゆる興行の世界では数多く見受けられます。本来であれば、新たな客層として若い世代を取り込む必要があり、歌舞伎に関していえば市川海老蔵さんや片岡愛之助さんがブログを始めたのも、普段あまり歌舞伎に縁のない若い人たちに、少しでもその魅力を伝えようという狙いもあるのでしょう。とはいえ、ただでさえインターネットやゲームなど娯楽が多様化しているうえに、バブル崩壊後の不景気の中で生まれ育った今の若い人たちの財布のひもは、おしなべて固く、新規の客として開拓するにはかなりの努力が必要だと思います」 老舗芸能事務所の破産で浮き彫りになった演劇界が置かれている状況。その経済的な厳しさは、想像以上に深刻なようだ。 (文責/JAPAN芸能カルチャー研究所)