「お得校」の中身に変化! 入り口偏差値と大学合格実績を比べるのはもう古い【最新中学受験事情】
◆志願者数が増えている学校一覧
ここに前年と比較して志願者が増えている学校のリストがあります。この数字は、首都圏模試センターが2024年9月に実施した模擬試験を受けた受験生が、志望校として名前を入れた学校の志望者数の総数を前年度同月の数字と比較したもので、上位30校の中で100人以上増加している学校が26校もあります。首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成氏いわく、「各学校の人気傾向がダイレクトに反映されている」データです。 この中にある学校は、それぞれの理由があって志望者を集めているのですが、この中にも高大連携を積極的に進めて人気が出ている学校が複数あります。 例えば、三輪田学園は、伝統女子校の中でいち早く法政大学と連携し、30人の推薦枠を得たことで注目されました。日本学園は、26年に明治大学付属世田谷中学校・高等学校となることを見越して入学者を増やしています。さらに順天学園は、北里研究所と法人合併に向けた基本合意書を締結。またグローバル教育に積極的に取り組んでいる佼成学園は国際基督教大学(ICU)と高大連携協定を締結しました。 「志望者数が増えている学校は、このように積極的に高大連携を進めているだけでなく、変化の激しい未来を見据えて教育改革に地道に取り組んでいて、その姿勢が保護者から評価されています」と北氏。 国立大学協会も、「18歳人口の減少に伴い、将来的には選抜という視点に加え、マッチングの視点が重要視されることも考えられる中で、各大学において多様に実施される総合型選抜・学校推薦型選抜は、その重要性を増していくことになる」とし、「学力試験以外の要素を加味した『総合型選抜』・『学校推薦型選抜』などの丁寧な入学者選抜の取組を加速・拡大する」としています。 通信制のZEN大学が認可され、2025年には入学定員3500名規模で開校するなど、今後大学の勢力図も書き換えられていく様相を呈している中、全日制中高で提供される教育内容に対する再評価も必要になってくるのではないでしょうか。 中学受験を考える保護者が何を求めているのかというニーズをつかみつつ、未来を創る子どもたちにどのような教育を行うのか、私立中高の模索も続いていくことでしょう。 受験する側も、何がわが子にとって「お得」なのか、それぞれの軸を持って見極めることが必要です。 拙書『中学受験 親子で勝ち取る最高の合格』(青春出版社)では、わが家の軸の作り方、わが子にあった学校を選ぶポイントを紹介しています。ぜひ参考になさってください。 この記事の執筆者:中曽根 陽子 数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。お母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)など著書多数。
中曽根 陽子