<憲法70年>個別的自衛権で自衛隊はどんな行動が取れるのか?
必要最小限度の武力で相手攻撃を排除
では「武力攻撃事態」または「武力攻撃」が発生した場合、日本はどう対応するのでしょうか。この法律は、武力攻撃を「排除する」および「速やかにそれを終結させる」とし、その場合にも「武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない」と規定しました。要するに、必要最小限度の武力で、相手国からの武力攻撃を「排除、あるいは終結させる」としたのです。 この任務にあたる自衛隊は、朝鮮半島にまで行けるでしょうか。法律は何も明示していませんが、いわゆる集団的自衛権を行使する場合は外国へ行くことも想定されているので、個別的自衛権行使の場合でも自衛隊は朝鮮半島で必要な行動を取ることがあると解釈すべきでしょう。 具体的には北朝鮮の核やミサイルの施設も、自衛隊による「排除や終結」、分かりやすく言えば、「破壊」の対象になると思います。 日本国政府は、憲法および関連の法律に基づき、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)などのシステムを構築して防衛に努めていますが、核を搭載したミサイルにより巨大な破壊力のある攻撃が極めて短い時間で、また複数の施設から行われる恐れがあることにかんがみると、武力行使による自衛が常に有効か、限界があるのではないかと言わざるを得ません。 本稿を締めくくるに際して、外交的手段で問題を解決することが、迂遠(うえん)に見えてもより安全な道であることをあらためて付言しておきます。トランプ大統領が5月1日に「金正恩委員長と会談してもよい」と述べたことは重要であり、米朝両国が対話による解決を模索することを期待しています。
------------------------------ ■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹