『グラディエーターII』ポール・メスカル&デンゼル・ワシントンの演技論 リドリー・スコットの目を盗んでリハーサル
デンゼルも「まあ、リドリーは他に25のことを心配しないといけないからね。俳優はわがままだから、もし彼が俳優たちに助けを求めることを習慣化させたら常に煩わされることになる」と笑って付け加えた。
そして、遠くから多数のカメラで一気に撮るスコット監督の撮影現場では、俳優陣はカメラを一切意識せずに演技をする。“カメラを何台見つけられるかゲーム”をやったこともあると明かしてデンゼルを驚かせたポールは、「12台というのは、注意を払うには多すぎるよ。半分は自分の後ろにあるから、そもそも見えないし。カメラは僕たちに決して近づかず、引きとクローズアップを同時に撮っているんだ。だから劇場で演技をしているような感じだった」と振り返った。 ポールが演じたのは、第1弾『グラディエーター』には少年として登場したマキシマス(ラッセル・クロウ)とルッシラ(コニー・ニールセン)の息子ルシアスだ。『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』では帝位継承者であるために命を狙われ、ローマ帝国を追われたルシアスが、成長し、妻を殺したローマ帝国軍への復讐を胸にグラディエーター=剣闘士となる姿を追う。
グラディエーターとしての体作りの過程では、心理面でも大きな変化があったとポールは言う。「毎日ジムで過ごして、他の人を傷つけることができるような体──これって変な言い方かな(笑)──になると、興味深いことが起きた。ホルモンのせいかわからないけど、“ゾーンに入る”みたいな感じで。コロセウム(円形闘技場)も怖くなかったし、完全に世間知らずだと思うけど(笑)、元UFCファイターやボクサー相手に戦って勝てると思うようになった。僕はただの俳優なのに(笑)」
一方のデンゼルが演じたのは、ルシアスの復讐心に目を付け、グラディエーターの世界へと誘う謎の奴隷商人マクリヌス。カリスマ的でありながら、どす黒い野望を秘めた狡猾な男だ。「自分の役柄がどんなものか掘り下げる前に、監督と脚本に惹かれた。だから、“この役だったから”やることにしたとは言えない。脚本を読んで、監督を知り、共演者を知り、そして役を掘り下げる。その時初めて『僕はこれか!』みたいな(笑)。『なるほど、ルシアスを操るのか』と。マクリヌスに何が起こるのか、彼はどうしてそのようなのか、誰がかつて彼を操り、利用したのか。そして、彼が自分の身に二度と起こさないと決めていることは何なのか、と。そうした何百万の問いを考えていく」(デンゼル)