世界中で通用する社名「トヨタ」はかつて「トヨダ」だった! 「ダ」から「タ」へと濁点がなくなった理由とは
トヨタはかつて「トヨダ」だった
トヨタ自動車の創業期、まだ豊田自動織機製作所の自動車部として事業を行っていた際の社名や車名は、豊田(トヨダ)だった。したがって、第二次世界大戦前の1963年(昭和11年)に誕生した1台目の乗用車であるAA型は、豊田(トヨダ)AA型乗用車と名乗り、ラジエターグリル上のマスコットも、丸で囲まれた「豊田」の漢字の後ろ側に翼のつく図柄で、その下にはアルファベットでTOYODAと記されていた。 【画像】1963年に懸賞付き公募で選ばれたトヨタのエンブレム 同じ年の夏に、マークの懸賞付き公募が行われた。そのなかから選ばれたのは、中島種夫というグラフィックデザイナーが手掛けた「トヨタ」のカタカナ文字を使った図案だった。 採用の理由と、読み仮名の変更について、濁点をなくすことで画数が8になり、縁起がいいこと。創業者と企業名や車名が違うことで、個人を離れ、会社として発展していくことへの期待。また、トヨタのほうが濁音がないことで発音の調子もよいなどがあったと伝えられている。 豊田自動織機製作所の自動車部から、自動車会社として独立する翌1964年には、トヨタ自動車工業株式会社と名乗ることになり、AA型乗用車もトヨタAA型乗用車へ変更して販売されるようになった。 ほかに、本社のある町も、豊田市トヨタ1丁目と記されるようになる。 社名の変更がなされて今年で60年となった。その間にトヨタは世界一の自動車メーカーへ成長し、2023年度には、年間の営業利益が5兆円を超え、日本の上場企業として初の快挙を成し遂げるに至っている。 そうした成長の歴史を背景に、巷の余談として……海外でレストランなどの予約をする際、日本人の名で外国人には読みにくかったり、発音しにくかったりすると間違えられる場合があり、「トヨタ」と名乗れば間違いなく相手に伝わるといった生活の知恵も見受けられるようにもなっている。もしかしたら、元のトヨダのままでは、トヨタに比べ海外などで名前の理解度は少し下がったかもしれない。
御堀直嗣