ドクターイエロー引退、高速化も一因…最新「のぞみ」に検査機器を載せ代替
「新幹線のお医者さん」として長年親しまれてきた東海道・山陽新幹線の検査用車両「ドクターイエロー」がまもなく引退する。老朽化が主な理由だが、営業車両の高速化など最新事情に対応できなくなった影響も大きい。検査用車両では今、AI(人工知能)など最新技術の活用が進む。 【動画】ドクターイエローの車内を公開
次世代車両 点検にAI活用
ドクターイエローの正式名称は「新幹線電気軌道総合試験車」という。1964年の東海道新幹線開業以来、「日本の大動脈」の安全を支えてきた。
「黄色」なのは、鉄道業界の伝統だ。在来線用の検査・工事車両は事故防止のため、夜間でも目立つように黄色が使われており、ドクターイエローも開業当時の初代(T1編成)から黄色だった。
営業車両ではないため、運行ダイヤは不定期かつ非公表だ。「見かけたら幸せになる」という都市伝説が広まり、幅広い世代から人気を集める。
現在は第3世代のT4編成(2001年導入、25年1月引退)と、T5編成(05年導入、27年以降に引退)が10日に1回程度、東京―博多間を往復運行。8人の検査員らは1泊2日の日程で、線路のゆがみや架線の摩耗など約70項目について計測する。
車両は2000年代に製造が終了し、20年に東海道新幹線から引退した700系がベースで、車体が老朽化。古い技術が使われているため、最新検査機器を搭載できない弱点を抱える。
実は「速度」も引退の理由の一つになっている。現在の東海道新幹線は最高時速285キロだが、ドクターイエローは時速270キロ。高速化した運行ダイヤの隙間を縫って走行するには、スピードが足りないのだ。
高速化は、検査のあり方を根本的に変えつつある。検査用車両を使わず、営業車両が運行中に架線や線路の異常を自ら調べる方式が既に導入されている。
「のぞみ」として運行する最新のN700Sでは22年から、一部車両に専用検査機器を搭載。屋根の上から架線に赤外線を当てて摩耗状況を調べたり、レールを流れるATC(自動列車制御装置)信号の電流の状態を確認したりしている。