安保法成立で自衛隊は強化される? 法律と政府答弁との乖離
一方、安倍首相は、自衛隊が他国の領土へ派遣されることは絶対にない、と答弁していますが、これは、国の義務として法律に記載されていることと明らかに矛盾していると思います。 もう一つの憲法違反の疑いは、新しい国際平和支援法(テロ特措法およびイラク特措法を恒久法化したもの)が、「非戦闘地域」で、かつ、「後方支援(本法では『協力支援活動』と呼んでいる)」であれば、外国での紛争に巻き込まれないという前提の下に、自衛隊が各国に協力することを可能にしていることです。この前提についても、、「非戦闘地域」と「戦闘地域」の区別は困難だ、「後方支援」であっても敵対行為とみなされるのが国際常識だ、という有力な反論や疑問 が提出されているのは当然だと思います。 安保関連法案の改正は国会での結論がすでに出たことであり、政府・与党としては今後も争点になるとは考えないのかもしれませんが、一件落着とはとても思われません。国民としては、以上の問題点を含め、今後の安全保障関連の法整備のあり方について、引き続き熟慮を重ねる必要があるのではないでしょうか。
■美根慶樹(みね・よしき) 平和外交研究所代表。1968年外務省入省。中国関係、北朝鮮関係、国連、軍縮などの分野が多く、在ユーゴスラビア連邦大使、地球環境問題担当大使、アフガニスン支援担当大使、軍縮代表部大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表などを務めた。2009年退官。2014年までキヤノングローバル戦略研究所研究主幹