市民の大会と興行どうバランス? 問われる横浜市の姿勢 国際プール再整備計画問題
「(計画素案に対する市民からの)たくさんの意見を踏まえ、原案の作成を進めた。誰もが楽しく過ごし、喜んでいただける、そういった拠点を作っていきたい」。16日に公表された横浜国際プール再整備計画の原案について、横浜市の山中竹春市長は20日の定例会見でそう語った。 ■「すべてが同じには…」 6月に発表された素案で、夏はメインプール、冬は体育館として利用されているメインアリーナについて、メインプールを廃止して通年で体育館として利用する方針が示された。 これに対し、水泳関連団体は試合会場となるプールのほかに練習用のプールがなければ、県レベルの主要大会が実施できなくなるなどと訴えた。 折衷案として市が考えたのは「メインプールは廃止するが、サブプールで主要大会を開催できるようにする」というものだった。新たに練習用の25メートルプールを整備し、バリアフリー化も進める原案をまとめた。 レーン数がメインプールの10に対し、サブプールは8。観客席数はメインプールの4000に対し、再整備後も700程度で、市スポーツ振興部幹部も「すべてが今までと同じというわけにはいかないことは認識している」と苦渋の表情を浮かべる。これまでよりも開催期間を長くするなどの措置が必要な大会が出てくるかもしれない。 ■体育館が圧倒的に足りない 会場が不足しているのは水泳だけではない。再整備計画案をめぐり、5以上の競技団体が、通年体育館化を要望した背景にはそんな事情もある。 ある競技団体では、本来は横浜市で開催すべき大会を市外の施設を借りて実施しているといい、「人口を考えると、横浜市は体育館の数が圧倒的に足りない」と指摘する。 別の競技団体は市に提出した文書で、プロスポーツの試合が横浜国際プールで開催されるようになってから、ある大会が「毎年空き日程で開催することが余儀なくされ開催時期が定まらない状況が続いている」などと訴えている。 これらの声をどう受け止めるか。プロスポーツでの利用を想定し、通年で体育館として利用される方針のメインアリーナにはスイート・ラウンジやファミリー席などを整備する計画だが、興行と市民利用のバランスをいかに図り、どちらをどう優先するのか。その運用をめぐっても市の姿勢が問われることになる。(橋本謙太郎)