17歳で先生からの性暴力に苦しんだ私が思い出す「バイアグラ服用後」の悪夢
ED治療薬は「悪用・濫用」と言われないの?
試験的運用は始まったが、この「試験的」なお試し期間は、一体いつまで続くのか、福田さんは大きなため息をついた。 「この試験的販売は、どれだけの件数を達すれば十分とみなされ、試験的運用でなく本運用になるのかはっきりしていません。いつ試験的運用が終了し、その後の議論がどのような形になるのかなど、今後については一切はっきりせず、ぼんやりしています」 この福田さんの言葉には、驚いた。今回の勃起不全(ED)治療薬は、「時短スキームで進む」と言われているのに対して、緊急避妊薬の現状はこんなだったとは……! ちなみに緊急避妊薬は、世界の約90ヵ国で薬局で販売され、国民皆保険でカバーされていたり、未成年には無料、学校の保健室においてある国もあるという。 「日本のこのアクセスが悪い状況は、国連でももはや”人権問題”として勧告を受けています。11月に私は、スイス・ジュネーブで開催された国連女性差別撤廃委員会に参加したのですが、そこでは日本の状況の深刻さから、書面でのフォローアップを求めたほどでした」(福田さん) 国連からの指摘の内容をまとめてみた。 2023年 国連人権理事会普遍的・定期的レビュー 勧告:生殖年齢にある女性が、質の高い現代的避妊法を、政府補助金を通じて入手しやすく、手頃な価格で入手できるようにし、緊急避妊薬を医師の処方箋なしに薬局で購入できるようにする取り組みを加速させること。 2024年 国連女性差別撤廃委員会 懸念事項:緊急避妊薬に関する明確な政策が実施される予定がないこと 勧告:すべての女性と女児に、緊急避妊薬を含む手頃な価格の現代的避妊法への十分なアクセスを提供すること。これには、16 歳と 17 歳の女児が避妊法を利用するために親の同意を得るという要件を撤廃することも含まれる(2年後、書面での進捗報告義務付) 今回福田さんに資料を見せていただき、ここまではっきりと国連から指摘されていることに驚いてしまった。女性の「今は妊娠をしたくない」という切実な思い、妊娠をしたくない時に避妊をする権利は、これほどまでに侵害されてきたのか……。10代の頃の自分と重なり、と悲しみと怒りが沸き上がった。 そして一方で、勃起不全(ED)治療薬は、初の「時短」スキームで薬局販売が検討されるのだ。 「でも、こういったことは、はじめてではなく、過去にも全く同様のことが起きています。ちょうど今から25年、四半世紀前の出来事についてもお話したいと思います」と福田さん。 後編『バイアグラは「特別待遇」? 17歳で教師の性暴力に苦しんだ私が知った「低用量ピル突然承認」の歴史』では、引き続き福田和子さんにお話を伺いながら、繰り返される不平等な歴史についてお伝えする。
桑沢 まりか(ライター・翻訳)