日産を襲う「ゴーン経営の副作用」 利益99.2%減、PBRは0.24倍──“異常値”の背景は
米ゼネラル・エレクトリックが復活した理由
GEは、かつての多角化戦略により、エネルギー、ヘルスケア、金融など幅広い分野に進出していたが、これがリーマンショック後の低迷の一因になった。カルプCEOは、この多様化戦略を見直し、収益性の低い部門や負債の多い事業からの撤退を進めた。特に、GEキャピタル(金融部門)の縮小や、発電部門の整理が重要な施策となり、事業をシンプルかつ収益性の高い分野に集中させることに成功した。 さらに、GEはコスト削減や資産売却を通じて債務削減を進め、特に負債比率の低減に成功した。これはかつてのように大規模な従業員のリストラというよりも、むしろ株主への配当金の減額や、資産の売却による現金確保というアプローチによって、財務基盤の強化を行った。これにより、会社が骨抜きにならず、各従業員の有する経験やノウハウが生かされることとなった。 最後に、デジタル技術と再生可能エネルギーへの投資がGEの未来を切りひらいた。GEは、発電機器の製造や航空エンジンといったコア事業を強化しつつ、デジタル技術や再生可能エネルギー分野への積極的な投資を行った。特に、航空エンジン部門はパンデミックからの回復が進み、利益を牽(けん)引する存在となっている。 カルロス・ゴーン氏は、日産自動車にとって短期間で劇的な改革をもたらしたが、その反動として、長期的な視点を欠いた経営手法が業績悪化の一因となったといえる。GEの事例と同様、強権的なリーダーシップが短期的な成功をもたらす一方で、その後の組織の脆弱性を露呈させた。今後の日産が持続的に成長するためには、GEの先行事例などを踏まえ、競争力を回復させていく必要があるだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Xはこちら
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