クオリティよりも「コスパ」重視…1話1分「縦型ショートドラマ」製作の知られざる舞台裏
拡大し続ける日本市場
ほかにも魅力はあるという。金氏がさらに続ける。 「ショートドラマは短期間で製作できるので、作品にトレンドを反映させやすい。また、エンタメ作品で扱いにくい文化や社会的なテーマを無理に作品に落とし込む必要もないので、ローカライズもしやすい。たとえば、最大手のShortMaxは15か国の言葉に対応しています。おそらくほとんどすべての言語圏をカバーできるはずです」 世界的にはコンテンツ産業の市場規模は拡大傾向にある。日本経済団体連合会が2023年4月に発表した資料によれば、世界のコンテンツ市場は2020年時点で約1.1兆ドル(約149兆円)、2025年には約1.3兆ドル(約183兆円)に成長することが見込まれている。 しかし、こと日本においては、先行きはあまり明るくない。世界市場が拡大するにつれて、日本市場が占める割合は減少傾向にある。2013年には中国に抜かれ市場規模は世界第3位に転落した。また、調査機関PwCが2023年に公表した2021年から2025年までのコンテンツ市場の予測平均成長率では、調査対象となった53カ国中最低の数値となる3%を記録した。 ほかにも、たとえば映画やアニメ業界を巡って「製作費が安すぎる」「労働環境が劣悪」など暗い話題を目にすることも少なくない。 だが、ことショートドラマにおいては、日本が世界市場においてプレゼンスを発揮する余地があるかもしれない。 「実はショートドラマは現時点で、日本市場が海外シェアの10%ほどを占めています。これは、英語圏に次ぐ数字です。ここ1年で日本のショートドラマ市場は急拡大を続けている。ユーザー課金率も高いですから、今後も成長の余地があるはず。個人的には世界シェアの2割から3割を占めるポテンシャルがあると思っています」 実際に、日本企業も製作に加わった作品が世界で人気を博すケースも誕生している。現在縦型動画アプリShortMaxで配信中の作品『大富豪のバツイチ孫娘』(中国作品のリメイク)がそうだ。テレビ朝日とShortMaxが共同で製作。金氏もプロデューサーの一人として製作陣に名を連ねている。 同作は10月1日に配信が開始され、10月14日から20日の週では人気ランキングで世界1位を獲得した。 「日本はIP(価値を生み出すアイデアや創作物のこと)大国です。漫画やアニメ、小説をはじめ、世界的に人気を集めている作品が多々あります。まだ、実写化などしていない埋もれたIPもあるでしょう。それらを発掘し、ショートドラマ化して、世界に届けることも考えています」 まだまだ、発展途上にあるショートドラマ市場。日本発の作品が世界を席巻する日もそう遠くないのかもしれない。 (取材・文/小林空)
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