『モンスター』恋愛感情はどうやって証明する? “杉浦”ジェシーにスポットライトが
不妊治療がもたらす負担と問題点をえぐる『モンスター』第3話
破綻した夫婦関係を取り繕うための嘘。排卵周期をコントロールしてまで妊娠を避けた根底には茉由の斉藤に対する思いがあり、夫に不倫を疑われた茉由は、追い詰められて斉藤を悪者にした。茉由の斉藤に対する思いに嘘はなく、子どもができなかった茉由は逃げ場を求めていた。不妊治療が当事者に課す負担を浮き彫りにしつつ、パートナーではない相手の遺伝子を受けることの倫理上の問題点をえぐっていた。 幸せの形は人それぞれである。全てを手に入れたいと望むのは、どれが本当の幸せか見えていないからかもしれない。不妊治療と嘘をついて斉藤との関係を続けた茉由を目にして、亜佐美は我が身を省みざるを得なかった。亡き恋人への思いをひた隠しにする自分は幸福なのか。本当の提供者を夫に伏せたまま新しい人生へ踏み出した亜佐美は、自身を偽らない生き方を選んだ。 法廷で被告に芝居をさせ、傍聴する依頼者に自省を迫る亮子のやり方はフィクションだから成立するものである。それは同時に、法律が裁くことのできない人間の心を救うには、その人自身が自らの心と向き合う以外にないと伝えるようだった。
石河コウヘイ