デング熱、蚊が死滅する10月には感染終息へ。専門家「卵で越冬もウイルスは次世代に伝わらない」
秋でも「蚊取り線香」が効果的
田邉参事は「念のため用心を重ねてほしい」と注意を促す。第1の対策は成虫による感染から身を守ることだ。「蚊にさされそうな野山や公園に出かける際には、長そで長ズボンの着用を心掛けてください。蚊を寄せ付けない蚊取り線香をたくことも効果的です」 厚生労働省作成のデング熱対策手引きによると、夜間使用されている蚊取り線香、蚊取りマットなどの殺虫剤は、殺虫効果の他にも、蚊を屋内に侵入させない効果も期待されるため、昼間から殺虫剤を使用する方法も効果的という。 蚊取り線香などは季節外れとしまわずに、今しばらく身近に置いて活用したいものだ。
不用意な水たまりを作らずボウフラ防除を
第2の対策は幼虫発生源の根絶だ。蚊の幼虫であるボウフラのすみかといえば、池やドブ川を思い浮かべるが、ヒトスジシマカは、ごく小さな水たまりに好んで卵を産む。 植木鉢の下の受け皿、置き忘れたつぼ、捨てられたままの空き缶やビニール袋などに水がたまり、ボウフラがわいてしまう。「庭やベランダなど、身近なところで不用意な水たまりを作らないよう、習慣づけてください」(田邉参事) 家庭菜園のバケツは使っていないとき、伏せておくだけでもいい。日ごろから自宅や会社、学校の周囲を清掃するのも、ボウフラ防除に役立つ。
感染症の知識を深め怖がらずに向き合う
田邉参事がもっとも強調するのが、デング熱の教訓を、来年以降に生かすことだ。「マラリア、コレラなど、デング熱以上に注意すべき感染症が少なからずあります。海外旅行に出かける際、旅行先でどんな感染症のリスクがあるかを事前に調べ、必要があれば予防接種などの適切な措置を取りたい」 情報収集にはインターネットが効果的。たとえば厚生労働省検疫所のホームページで、渡航地域別に感染症の状況や対策に関する情報を入手することができる。田邉参事は「有益な情報を集めて感染症のリスクがあることを知ったうえで、むやみに怖がることなく感染症と向き合う。自分の身を守り、周囲への感染症の広がりを防いで互いに健康を支え合う機運を醸成してほしい」と話す。 国際交流の推進に伴い、感染症のボーダレス化も加速しつつある。デング熱の教訓からグローバル化の時代を生き抜く知恵を学びたい。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)