デング熱、蚊が死滅する10月には感染終息へ。専門家「卵で越冬もウイルスは次世代に伝わらない」
デング熱の国内感染者が8月末の感染判明から、現在までに140人を超えた。涼しくなるとウイルスを媒介する蚊がいなくなるため、デング熱も終息するという情報は本当だろうか。これからどんな対策が必要なのか。感染症対策に取り組む専門家に聞いてみた。
蚊のデングウイルスは次世代に伝わらない
デング熱はデングウイルスが感染して発症する熱性感染症で、発熱や頭痛、ひふの発疹などが、主な症状だ。蚊が感染を媒介し、人間から人間へ直接感染することはない。 有効なワクチンはないものの、体内からウイルスが消失すると症状も改善する比較的良好な感染症だ。感染しても発症しないことが多い。 熱帯や亜熱帯の全域で流行している。日本では近年、200名前後の感染が毎年報告されてきたが、昨年の外国人渡航者の症例を除いて国内感染は報告されていなかった。 しかし、今年8月末、東京都立代々木公園で感染したとみられる複数の患者が判明し、国内感染の疑いが強まった。患者が全国的に点在し、いまだにわずかながらも患者数が増え続けていることから、デング熱への不安が解消されないまま、秋を迎えている。 国内ではヤブカの一種であるヒトスジシマカが媒介する。このヒトスジシマカの生態が、デング熱流行と終息のカギを握っている。大阪府健康医療部保健医療室医療対策課の田邉雅章参事(感染症対策担当)が次のように話す。 「ヒトスジシマカは5月から10月まで活動し、成虫は10月下旬には死滅します。卵で越冬しますが、卵を通じてデングウイルスが次世代に伝わったとの報告はありません。成虫の寿命は30日から40日ですので、デングウイルスに感染している成虫がまもなく死滅すると、デング熱は終息に向かうと思われます」 今年は例年にも増して、秋の深まりが待たれるところだ。
憶測を呼び、やや上滑り的な関心事に発展した一面も
田邉参事ら感染症対策チームの府民に対する役割は、感染症に関する適切な注意の喚起と、過剰な不安の軽減。一方、デング熱発生以降の経緯を振り返ると、主な感染場所が東京都心の著名な公園だったこと、女性タレントが番組ロケ中に感染したこと、楽しいはずの夏休みの旅行で感染した患者が相次いだことなどが衝撃の連鎖を招き、さまざまな憶測を呼んで、やや上滑り的な関心事に発展した一面が否定できない。 田邉参事は「デング熱の患者数は多いですが、きわめて深刻な症状は報告されていません。大阪府下でも代々木公園での感染者が3名確認されましたが、3名とも順調に回復されました」と、冷静に受け止めている。 大阪府では、感染症対策の一環として、2003年から毎年、蚊の捕集調査を実施してきた。今年も6月から10月まで年8回、府内の15カ所で蚊を採集して調査。現在までに、5回の調査で2053匹の蚊を採集して検査したが、デング熱や日本脳炎を引き起こすウイルスを保有する蚊はいなかった。引き続き10月まで調査を継続し、監視体制は緩めないという。