批判から称賛に一気に変わった災害時の山内泉アナのアナウンス…ルーツは2017年の勉強会にあった
ところで、テレビのバラエティー番組などでは、「アーティストの声の違い」などのテーマをはじめ、ときどき目にする「日本音響研究所」だが、日頃はどんな仕事をしている組織なのだろうか。 「もともと先代が科学警察研究所におりまして、日本で初めて声紋鑑定の技術の確立をしたんです。ただし、警察の研究所ですので、刑事事件しか扱えない。 そこで、民間の研究所として、刑事事件や民事事件の鑑定で音を分析し、視覚化して比較していくうち、ノウハウが溜まってきて、新サービスの開発コンサルなどを依頼されることも増えました。 また、並行して警察や裁判所、弁護士などの依頼による声紋鑑定や、音声が編集されているかどうかの鑑定、最近だとドライブレコーダーやスマートフォンなど、画角外の音が録れているものについて、見えないところで何が行われているかを音から推測するようなこともあります」 ◆イグノーベル平和賞を受賞した「バウリンガル」の開発にも ちなみに、犬とのコミュニケーションツールとして’02年9月にタカラトミーから発売され、同年のイグノーベル平和賞を受賞した「バウリンガル」も、日本音響研究所の共同開発によるものだった。 「もともと’97年頃にテレビの企画で、犬の鳴き声を録ってみて、そこからどんな感情が読み取れるかという依頼を受け、犬の鳴き声を集めて、パターン化して、声紋鑑定と同じような技術を使って作ったものが商品化された形なんですよ」 また、ピアノの買い取りの「タケモトピアノ」CMで赤ちゃんが泣き止むという噂があったが、それを同研究所が分析した要素を踏まえて音楽を作った携帯電話の「着メロ」サービスも好評を博す。そこから、’07年にタカラトミーがぬいぐるみのスイッチを長押しすると赤ちゃんが泣き止む音楽を再生する「赤ちゃんけろっとスイッチ」を発売している。 さらに今年2月22日には、’01年からの赤ちゃん泣き止み研究の集大成となる本『赤ちゃんのぐずり泣きが止まる本 けろっと泣き止む魔法のメソッド』を講談社から発売予定だ。鈴木さんは感慨深そうにこう語る。 「’93年に大学を卒業してから30年間、ずっと先代の父と共にひたすら音の研究をしてきました。それがこうして災害時のアナウンス方法に活用されたり、なかなか泣き止まない赤ちゃんに困っているお母さんたちに役立ったりするとしたら、こんなに嬉しいことはありません」 取材・文:田幸和歌子
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