批判から称賛に一気に変わった災害時の山内泉アナのアナウンス…ルーツは2017年の勉強会にあった
“声に情報をのせる”とは?
“声に情報をのせる”というのは、具体的にどうすればいいのだろうか。 「例えば、緊急時に悲鳴を上げたり、興奮して早口になってしまったりすると、情報を伝える意味では不適応になってしまう。しっかりと声帯の振動数を上げる必要はあるものの、上がりすぎると、音韻が崩れてしまうんですよ。 例えば、悲鳴を上げながら『助けて』と言うと、悲鳴によって、たぶん助けてだろうと認識できるのであって、音韻は崩れて、言葉として聞き取れないことがあるんですね。 その点、地震の時などは『大津波が来る』『何時に』『どこに』『どのぐらいの高さで』という情報はしっかり伝えなくてはいけないので、 緊急であることを知らせることと情報とのトレードオフですね。緊急性と情報との情報ののせ方のさじ加減はアナウンサーの腕の見せどころであり、かなりトレーニングされていたようです」 勉強会では具体的にどんなことをしたのか。 「まず普通のニュースのように読んで、興奮した感じで読んで、それらを再生し、声紋を視覚でもご覧いただきつつ、『これは緊急度が伝わりにくい』『これは情報が伝わるけれども、緊急度は伝わらない』ということをご確認いただきました。 『津波が来る』『何時に』『どこに』など、優先度の高い重要な情報は、イントネーションを強め、ゆっくりと声帯の振動数を上げて実践していただきました。 通常、ニュースではイントネーションを強くつけてしまうと、感情的なものがのってしまうため、情報だけを端的に伝える際には声帯を上下させずに淡々と読むことが望ましいのですが、例えばスポーツ中継や、競馬の実況中継などではイントネーションを強め、声帯の振動数を上げるなど、変化をつけます。そうした違いについて、実例を交えつつ、ビジュアルで見ていただき、ご確認いただきました」 ◆民放のアナウンスの評価は… ちなみに、NHKのアナウンスばかりが話題になったが、他局のアナウンスの評価を聞いてみると……。 「どこの局も情報をしっかり伝えることに注力されていたと思います。 NHKのアナウンサーは東日本大震災の教訓を踏まえて、リードした感がありますが、被災地外の方にとってはやはり『怖い』『不安になる』という声があるのもわかりますので、『選択の余地がある』という意味では、どの局も同じことをやってしまわない方がいいのかなとも思います。テレビ東京がアニメを流していることでホッとする方も実際にいますし」