【2024年版】個人事業主482人に聞いた「確定申告」アンケート調査
3月15日(金)に期限を迎えた2024年の確定申告。今年は、政治資金パーティ裏金問題を巡り「#確定申告ボイコット」がSNS上で一時話題となったが、2022年に発生した国税庁のシステム障害のような問題はなく、無事に終了した。 一方で、2023年10月から開始したインボイス制度により、所得税の申告で少なからず影響を受けた人もいるだろう。 そこで税理士ドットコムは、会員の個人事業主に対して、今年の確定申告についてアンケートを実施した。確定申告アンケートは昨年に続き2回目となる。 【質問概要】 ・今年確定申告した内容 ・申告書の作成、提出した方法 ・マイナポータル連携の利用 ・苦労した、困ったこと ・来年の確定申告に向けて 今年のアンケート結果の特徴としては「インボイス」や「マイナンバーカード(マイナポータル)」関連で苦労したというコメントが散見された。 気になる結果の詳細をさっそく見ていこう。 ●申告書の作成は「会計ソフト利用」が5割 アンケートではまず、「所得税の確定申告の内容」について伺ったところ、個人事業主を対象としたアンケートということもあり、「事業(本業)に関する税務申告」が92%にのぼった。なお昨年のアンケートと比べて、順位や割合に大きな変動はなかった。 結果は以下のとおり。 問:あなたが確定申告したのはどのような内容ですか?(複数回答) 【1】事業(本業)に関する税務申告 91.9% 【2】医療費控除、生命保険料控除、住宅ローン控除、ふるさと納税など控除に関する税務申告 37.8% 【3】副業やアルバイト・パートに関する税務申告 19.5% 【4】株やFX、不動産など投資での利益に関する税務申告 16.0% 【5】土地や建物の譲渡所得の税務申告 1.7% 【6】その他 1.7% 「その他」の回答内容には、「青色専従者給与の申告」や「暗号資産の利益の申告」などのコメントが寄せられた。 「申告書の作成をどのような方法で行ったか」という質問に対しては、「市販の会計ソフトで作成」した人が最も多く、全体の約5割を占めた。一方で「確定申告作成コーナー」や「e-Taxソフト」といった国税庁の申告書作成システムを利用した割合は、合わせて33%程度であった。 問:どのような方法で申告書の作成を行いましたか? 【1】市販の会計ソフトを利用 49.7% 【2】国税庁ホームページの「確定申告作成コーナー」を利用 17.0% 【3】e-Taxソフトを利用 15.6% 【4】税理士に作成代行を依頼 9.1% 【5】税務署等で入手した申告書で作成 3.7% 【6】国税庁ホームページからダウンロードした申告書で作成 1.7% 【7】その他 3.2% 「その他」の回答内容には、「青色申告会で作成」などのコメントが寄せられた。 次に、「申告書の提出方法」についての質問では、実に77%の方が「e-Taxを利用」と回答した。多くの人に税務署に行かずに手軽に提出可能なe-Taxが浸透していることがわかる結果となった。 問:申告書の提出はどのような方法で行いましたか? 【1】e-Taxを利用 76.7% 【2】窓口に持参 9.5% 【3】郵送 5.8% 【4】申告書の作成代行をした税理士が提出 5.6% 【5】その他 2.4% 「その他」の中には、「青色申告会が提出」「税務署で作成してそのまま提出」という回答もあった。 なお、確定申告書の作成方法、申告方法についてはいずれも昨年のアンケートと比べて、順位の変動は特になかった。 ●「マイナポータル連携」の利用は約半数 今年のアンケートでは新たに「マイナポータル連携」の利用状況について質問を追加。「利用した・利用する予定」の人と、「利用しなかった」人の割合が半々という結果となった。 問:マイナポータル連携を利用しましたか? 【1】利用した 48.2% 【2】利用する予定 1.3% 【3】利用しなかった 50.5% 「マイナポータル連携」とは、マイナポータル経由で源泉徴収票や、医療費・ふるさと納税などの控除データを一括取得し、自動で申告書に入力できる機能だ。利用にはマイナンバーカードが必要になる。 一見便利に思える機能だが、利用しなかった人も多くいるためその理由を聞くと、「事前準備が手間だった」が40%と最も多く、「マイナンバーカードを持っていない」が17%と続く結果となった。 問:マイナポータル連携を利用しなかった理由は?(複数回答) 【1】事前準備が手間だったので利用しなかった 40.1% 【2】マイナンバーカードを持っていない 17.4% 【3】マイナポータル連携を知らなかった 15.7% 【4】申告内容がマイナポータル連携の対象外だった 14.9% 【5】マイナンバーカード読取対応のスマートフォン(又はICカードリーダライタ)を持っていない 5.8% 【6】その他 18.2% 「その他」の回答内容には、「マイナポータル連携をする必要がなかった」「連携可能な項目と不可能な項目が混在するため」などのコメントが寄せられた。 実際、「マイナポータル連携」の対象となる収入は、給与所得や公的年金、株式の特定口座に限られていることもあり、個人事業主の主な収入である事業所得には対応していないことから、まだまだ普及が進まないようだ。 ●「仕訳がわからなくて不安」「保存し忘れて再入力」という苦労エピソードも 「今年の確定申告で苦労したこと・困ったこと」についての質問は、「作業時間の確保」という回答が34%と最も多かったが、今年のアンケートで新たに設問を追加した「領収書やインボイスの保存・管理」が31.7%と僅差で続く結果となった。 また昨年のアンケートでは、「特に苦労したり困ったりしたことはなかった」と回答した人が3割近くいたが、今年は約18%に減少している。インボイス登録に伴い、所得税の申告も複雑になり、これまでのようにはいかず苦労した人が増えたとも考えられる。 問:今年の確定申告で苦労したこと・困ったことはなんですか?(複数回答) 【1】作業時間の確保 34.0% 【2】領収書やインボイスの保存・管理 31.7% 【3】税法の理解 28.6% 【4】会計ソフトの使い方 24.9% 【5】税金や所得の計算 23.7% 【6】申告書の作成 22.0% 【7】特に苦労したり困ったりしたことはなかった 18.5% 【8】計算ミスや申告漏れの対応 12.0% 【9】税務署、税理士の対応 4.8% 【10】その他 1.9% 「苦労したこと・困ったこと」についての具体的なエピソードは以下のとおり(一部抜粋)。皆さんの困りごととよく似た内容もあるのではないだろうか。 ・普段からの領収書等の管理をしていないので、大量の処理に手間取った ・仕事が忙しくて作業する時間がなく、結局夜中から明け方にかけてやった ・繁忙期に会計ソフトへの入力がしばらくできず、短期間に多数の仕訳を行ったためミスや領収書格納漏れが発生した ・領収書などをインボイスがあるものとないものを分けるのが面倒だった ・インボイス対応について、内容や漏れがないかなどの確認が大変だった ・昨年から適格事業者に。確定申告後に消費税が経費として計上できることを知り、結果経費を過少申告していたことに気づいた ・会計ソフトで記帳までできたが、心配なので結局税理士に依頼した ・初めての青色申告で会計ソフトを使って本などを読んでやってみたが、それがあってるのかわからず不安 ・もともと計算が苦手で金額が合わないなどで、申告書をギリギリまで直していた ・どこまでが経費にできるかの判断や、記帳に間違いがないかの確認、節税方法を調べるのに少々手間がかかった ・マイナポータルアプリのシステムエラーが続き、結局諦めて手計算で行うことになってしまい、予想以上に時間がかかった ・マイナポータル連携で、医療費の情報が完全に連携されず、急遽手打ちやエクセルの取り込みで対応することになった ・固定資産台帳の作り方や減価償却の仕方に時間がかかった ・スマホアプリで作成していたが、保存されていなかったため、最初から入力しなおしになった 最後に、「来年の確定申告はどのように対応しようと考えているか」という質問には、以下のような回答が寄せられた(一部抜粋)。 問:今年の確定申告を受けて、来年の確定申告はどのように対応しようとお考えですか? ・例年ぎりぎりになってしまうので、来年こそ早めに終了したい ・紙の領収書の電子保存をこまめにするようにしたい ・こまめに入力して、わからないことは早い時期に税務署に問い合わせる ・事業用と個人用クレジットカードを使い分ける ・税理士から学ぼうかなという気持ちはある ・仕訳で悩んだ点が多かったので簿記の知識を身に付けて対応したい ・使いやすい会計ソフトに変更するか税理士に依頼したい ・マイナポータルを使うためにマイナンバーカードの発行を行いたい ●インボイス導入で申告業務に頭を悩ます声も 本アンケートは、確定申告期間が終了した2023年3月18日~3月22日に実施。ほとんどが「所得税の確定申告(納付申告)を終えた」と回答したが、「これから行う」と回答した人も0.6%いた。 また、昨年10月からのインボイス導入を期に消費税の課税事業者となったと思われる方々から、消費税絡みの所得税申告の苦労についてのコメントも多く寄せられた。 e-Taxの浸透など申告の手間は年々改善されているが、もし今年の確定申告への対応が大変だったと感じている方は、来年こそは早めに対処する必要がありそうだ。 ※アンケート実施期間:2023年3月18日~3月22日、調査方法:税理士ドットコムに登録のある個人事業主に対しインターネットで実施、有効回答数:482 ※2024/03/27 一部内容を修正しました
弁護士ドットコムニュース編集部