高校無償化になぜ「所得制限」? 賛否くすぶる
政府は10月18日、高校授業料無償化制度に所得制限を設ける改正案を閣議決定しました。実施は2014年度から、年収910万円以上の世帯を無償化の対象から外すという内容です。臨時国会での成立を目指すようですが、なぜ所得制限を設けることになったのでしょうか。
義務教育じゃないのに無償化する意義
まずは、高校授業料無償化制度についておさらいしましょう。この制度は、民主党政権下の2010年4月1日にスタートしました。公立高校の授業料を生徒から徴収するのではなく、国費で負担します。私立高校の場合は原則、公立高の年間授業料にあたる11万8800円を「高等学校等就学支援金」として支給。さらに、世帯年収によって増額の措置もあります。 日本で高校の授業料が無償化された背景には、親の経済力に関わらず、将来を担う子どもの学びを社会全体で支えるという理念があります。そもそも、1966年に国連で採択された「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」に則り、海外ではすでに多くの国が日本の高校に当たる後期中等教育を無償化されていたのです。遅ればせながら、日本も2012年9月、批准を保留していた無償教育導入の条項について、これを撤回する宣言を行いました。
現行制度は低・中所得者層への恩恵少ない?
では、実際にこの制度が導入されて、経済的な理由によって高校を中退する生徒は減ったのでしょうか? 全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)によると、2012年9月末時点の調査結果では、1998年の調査開始以来もっとも少なくなったことがわかりました。高校授業料無償化はもちろん、都道府県の補助制度も充実したことが、状況改善につながったとみられています。 一見すると、高校授業料無償化は非常に意義ある制度ですがすが、実はいくつかの課題を抱えています。そもそも、この無償化の財源は当然ながら税金です。この予算を捻出するため、もともと教育費がかさむ世代の税負担を減らす目的で作られた「特定扶養控除」を縮減しました。これにより、授業料の安かった特別支援学校や定時制高校などに通う子どもをもつ家庭は、かえって負担が大きくなってしまうケースが生じてしまったのです。また、現在の就学支援金では、私立高生の経済負担が依然として重いという指摘もあります。