家庭内の深刻トラブル 殺人の約半数は家族・親族間 「家の恥は外に出さない」は古い 「法律問題」として第三者に相談することで解決へ 弁護士解説
東大阪市の自宅で94歳の女性が死亡した事件で、6月10日、同居する長男で弁護士の男が傷害致死の疑いで逮捕された。5月には大阪府茨木市で、60歳の男が65歳の姉を暴行し、死なせてしまう事件も起きた。家族の中での悲惨な事件が目立つ。 日本の殺人事件の約半数は、家族を主とした親族間で起きている。殺人事件の認知件数は減少傾向にあるが、親族間の事件が占める割合は、依然として高いままだ。 (令和4年44.7%、令和3年46.0%、令和2年47.1% 警察庁統計より) 家族内や親族間といった、家族内紛争の解決に取り組む、「松尾・中村・上 法律事務所」の中村正彦弁護士に話を聞いた。
■家族内・親族間トラブルの相談件数は増加している
【中村正彦弁護士】 ここ数年、家族内や親族間でのトラブルの相談件数は増えており、大阪の私の事務所にも、全国から相談の連絡がきます。 20代、30代の成人した子どもに対し、過剰な干渉を続ける親。いつまでも親に依存し、別居していても、金銭面だけでなく、掃除洗濯をさせるなど親を家政婦のように使っている子ども。「あんたのせいで私の人生が狂ったのだから言う通りにしろ」などと、家族に無理を押し付けるような、おかしな価値観が家庭内でまかり通っているケースも多く見られます。
■「法律的な問題だ」という意識がないまま、苦しんでいる人が多い
家族内や親族間であっても、当事者間では解決しえない、深刻なトラブルが生じてしまうことは多々あります。これらに共通して多くみられるのは、当事者間では「法律的な問題」だと認識されていないことです。しかし、相手の権利を侵害したり、生活の平穏を阻害したりする行為は、まさに「法律的な問題」なのです。弁護士など第三者が適切な方法で介入し、訴訟などの法的措置をとることによって、解決につながることは少なくありません。
■「典型的なトラブル」以外のケースが問題
DV、高齢者虐待、児童虐待、ストーカーといった典型的な類型の人間関係トラブルは、それぞれの分野で、法規制や被害者の救済・支援システムの整備が進んでいることもあり、比較的、問題が顕在化しやすいように思われます。一方で、それ以外のケースに、表面化していない深刻な事案がかなりあるというのが、経験上の印象です。そして実際に、私どもの事務所でも、典型的な類型に当てはまらない、家族内・親族間トラブルに関する相談が増えています。