函館本線・森駅開業120周年! 名物駅弁「いかめし」はどんな人たちが作っているのか?
●伝統を守りながら、次世代・海外にも受け入れられる「いかめし」を模索
―今井社長にとって「駅弁」とは? 今井:駅弁は日本の伝統であり、独特の食文化だと思います。ただ、残念ながら若い世代では「駅弁」という食文化を知らない人が増えてきてしまっています。都市部では駅ナカの開発が進んで、駅弁以外の食べ物も買える機会が増えたことも大きいですね。一方で、百貨店にも、若い人たちは足を運ぶ機会が減っています。いまは、弊社が誇る職人技にこだわっていきたい……でも、この方法をどこまで続けられるか悩ましいところです。 ―今井社長は海外留学されていたとき、「いかめし」の実演販売をされたことがあるそうですが、「いかめし」の海外進出はいかがですか? 今井:先日もアメリカのスーパーで実演販売をしましたが、改めて「いかめし」の海外展開は難しいと感じています。(短期的に)経済的には円安過ぎるということ。また「海外進出=成功」ではないとも思います。加えて、「いかめし」は見た目がイカのままですので、海外ではグロテスクだと評価されたり、まるで北京ダックやスイートポテトのようだという声をよくいただくんです。海外展開の手法は、もう一度練り直す必要があると思っています。
●噴火湾を眺めて、森の「いかめし」を!
―北海道新幹線開業後、「森駅」の今後が気がかりです。 今井:森駅の今後については、弊社ではどうしようもないことです。ただ、この地でイカに米を詰めて煮付ける元祖「いかめし」を生み出し、80年以上「いかめし」を作り続けてきた歴史が消えることはありません。そして、これからの時代を生きていく方には、元が駅弁だったかどうかを気にする方は少ないと思うんです。現状も駅構内ではなく駅前の柴田商店さんに置かせてもらっています。「駅弁」の基準を見直す時期ではないかとも思います。 ―今井社長お薦め、いかめしを最も美味しくいただくことができる車窓はどこですか? 今井:森駅に降り立っていただければ分かりますが、そこには海しかありません。この「いかめし」のルーツとなった内浦湾(噴火湾)を眺めながら列車に揺られて味わっていただくのが、いちばん美味しいのではないでしょうか。今後、函館本線が旅客営業しないとなれば、この海を眺めて「いかめし」を味わうこともできなくなるわけですから、ぜひ、いまのうちに、森駅で下りて、海を眺めながら「いかめし」をいただいてみて下さい。