土の匂いがしないSUVが超クールだった! 初代ハリアーを振り返ったら「そりゃ売れる」がわかる
都会的なクロスオーバーSUVの先駆者だった
初代ハリアーは、当時のトヨタ・カムリ(1996年発売の6代目)をベースに、高級乗用車としての基本性能とSUVの機動性や機能性をあわせもつプレミアムSUVとして開発され、北米市場では、メルセデス・ベンツ MLクラスやBMW X5などを仮想敵として、レクサスブランドからはRXというネーミングで発売された。 カムリという北米で大人気のセダンをベースにしていることからも、土の臭いのするSUVではなく、都市型SUVであることは間違いないところで、クロスカントリーモデルとは別物の佇まいある都市型クロスオーバーモデルではありつつも、最低地上高を185mmに設定し、SUVとして十二分な悪路走破性が与えられている。 パワーユニットは、140馬力を発生するバランスシャフト内蔵の2.2リッター直列4気筒ハイメカツインカムエンジン(2000年11月に160馬力の2.4リッターエンジンに置き換え)、および220馬力の3リッターV6DOHC24バルブエンジンの2種類を搭載し、いずれもステアマチック付4速ATとの組み合わせ。駆動方式はFFとフルタイム4WDを用意していた。 土の臭いを感じさせないプレミアム感あるエクステリアデザインもさることながら、インテリアも高級セダンに匹敵するデザイン、質感を備え、前席のサイドウォークスルーが可能など、使い勝手も文句なし。現行ハリアーを筆者は「SUV界のクラウン」と勝手に呼んでいるが、初代ハリアーもまさに高級セダンのように快適な走行性能、乗り心地をもつSUVで、まさにクロスオーバーSUVというジャンルを日本で確立したモデルだったのである。 ちなみにハリアーという車名の由来は英語の「小さな鷹の一種“チュウヒ”属のタカ」の名称に由来しており、それはエンブレムデザインにも表れている。 振り返れば、初代ハリアーが登場した1990年代は、日本市場、北米市場ともにSUV人気が一気に高まった時代で、「高級サルーンの持つ優れた資質はそのままに、SUVの良好な視界、オフロードでも走行できる機動性、ステーションワゴンの便利さを兼ね備えたクルマ」として開発がスタートしたと聞いている。 “WILD but FORMAL”。つまり、「ワイルド、しかしフォーマル……」というキャッチフレーズが、そこから延々と続く歴代ハリアーの本質を見事に表しているといっていいだろう。 フォーマルという意味では、シート地上高をフロントで725mm、リヤで745mmに抑えたことで、悪路走破性とスムースな乗降性を両立。力強さとプレステージ性を追及したエクステリアデザインをはじめ、高級車に匹敵する優れた操縦性・走行安定性と静粛性、乗り心地もハリアーならではの特徴として受け継がれている。 最後に、初代ハリアーがクルマ好きを驚かせたトピックをひとつ紹介したい。それは1998年6月に発売された特別仕様車で、V6モデルをベースにした、イタリアのカロッツェリアであるザガート社とのコラボレーションモデル、「ハリアー・ザガート」である。 ザガートによるフルエクステリア、オーバーフェンダーを纏い、専用ローダウンサスやゴールドのアルミホイールを装着。当時の価格は約363万円と、ベース車の3.0Gパッケージの約80万円高とはいえ、イタリアンテイストむんむんのオンロードV6ハリアーとしてはかなりリーズナブルといえる値付けだった。 2024年末、カーセンサーやグーネットで検索したところ、残念ながら1台もヒットしなかった希少車でもある。
青山尚暉