フィアット新型「600e」と暮らしてみたら「500L」との2台体制を夢見てしまい…ファミリーカーとしてオススメの1台です【週刊チンクエチェントVol.47】
誰もが安心して運転操作ができる自然なフィーリング
と、こんなふうにまくし立てるといかにもEVの特性を強調したクルマのように思われちゃうかもしれないけど、実は逆だったりする。たとえば先述のハンドリングにしても、ステアリングのフィールはクイックなのではなくむしろスロー気味で、切り込みすぎてしまうミスを誘発しないセッティング。加速はたしかに見た目より遙かに鋭いけど、アクセルペダルを踏んだ瞬間にトルクをドーンと炸裂させるのではなく、上手に角を丸めた感じで送り出していく。癖らしい癖も、まったく見当たらない。つまりどういうことなのかといえば、誰もが安心して運転操作ができ、自然で穏やかなフィールとともにバッテリーEVならではの魅力を味わえるように躾けられているのである。これはファミリーカーとしての実に正しいあり方であり、ユーザーに対するフィアットの優しさ、良心なのだと思う。 全体的には、何かどこかが突出して尖ってるようなところがなく、バランスに優れた優等生的なバッテリーEVという印象。あまりにまとまりがいいので、ともすれば走りは無個性みたいに感じてしまう人もいるかもしれない。でも、乗ってるうちにジワジワとよさが身体に染み入ってくるようなところはあるし、一歩深く足を踏み入れてみると伝統に則ったスポーティさが貌を見せてくれる。間口が広く、奥が深いのだ。……ホメ過ぎか? 航続距離関連の話をしておくと、WLTCモードで493kmというそのままの数字はさすがに無理筋だったけど、当たり前のように満充電で400km前後の距離を走行できた。残りの充電量48%からタブレット端末でメールのチェックや返信などをしてたら過ぎてしまった30分の充電で89%まで回復するなど、急速充電での電気の飲み込みも想像していたより遙かによかった。これはもう立派に実用的、といえるレベルにあると断言していいと思う。 何だかものすごく気に入った……というか、だいぶ欲しい気持ちになっちゃった。 趣味のクルマはゴブジ号、アシの実用車は600e。えらく理想的な組み合わせであるように感じるのは、僕だけだろうか……?
嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
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