荏原製作所、電動ターボポンプの性能試験に成功–ロケットエンジンの簡素化に期待
荏原製作所は11月8日、ロケットエンジン用「電動ターボポンプ」の液体窒素での性能試験に成功したことを発表した。同社は電動ターボポンプの開発を2022年から進めている。 電動ターボポンプは、羽根車を回転させる動力源として電動機を使用する。従来の基幹ロケットに使われているのはタービン駆動ポンプ。タービン駆動のポンプは、高温の高圧ガスで回転させるタービンでポンプの羽根車を回転させる。 電動ターボポンプは、タービン駆動ポンプに比べてエンジンシステムを簡素化して、高い信頼性と容易な出力制御が実現できると期待される技術という。荏原製作所は現在、推力3t級のロケットエンジンを想定した電動ターボポンプの開発を進めていて、2023年12月には水試験モデルでの性能試験を完了させている。 今回試験した電動ターボポンプは、液体メタンを燃料として供給するロケットエンジンを想定。試験は、2024年9月初旬に宮城県のJAXA角田宇宙センター内の極低温ターボポンプ試験設備で実施した。 実際のロケットエンジンの燃料と同様に、マイナス196度の液体窒素を作動流体として使うことで、低温環境独特の課題に対する設計や製造の条件を確認した。 十分な時間の運転試験を通して目標の回転速度や計画していたデータを測定でき、ポンプの異常振動や液体窒素の漏洩などもみられることがなく、安定して作動していることを確認できたという。 同社は、ロケットエンジンのさまざまな運用を想定した複数の運転条件などについて、引き続き基礎的なデータを取得し、電動ターボポンプを使ったエンジンシステムの実現につなげていくと説明。今後は液体メタン(実液)の試験、液体酸素用ポンプの製造と試験も進め、両者を合わせたエンジンシステムの実証に向けた取り組みを進めていくとしている。
UchuBizスタッフ