西表島近海の生物が持つ抗がん作用のある天然化合物の合成に成功 中央大と高知大
天然のイリオモテオリド-1a数ミリグラムを得るには200リットル分の渦鞭毛藻が必要だったが、今回の成果により、人工的に化学合成ができるようになった。今後は高知大で動物実験を、中央大で培養細胞への毒性のメカニズム解析を行い、創薬研究への展開を目指すという。
津田教授は「海洋生物由来のものは構造決定が難しいものが多く、さらに大量に得にくいという課題があったが、成果を基に、動物実験で良い成果が出せると話が進むのではないか」と話した。不破教授は「外敵がいなくなるなどして、目的の化合物を作らなくなる生物もいるので、限られた試料で構造決定しなければいけないのが天然物化学の難しいところ。今回の構造決定の手法に汎用性を持たせて、このほかにも難しい化合物の構造を決定していくことが可能になるか検証したい」と今後の展望を語った。
研究は、日本学術振興会の科学研究費助成事業と、自然科学研究機構岡崎共通研究施設 計算科学研究センターの助成を受けて行われた。成果は10月17日に米化学会の「ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー」電子版に掲載され、中央大学と高知大学が同月23日に共同発表した。