ビール列車・運転体験・列車撮影会…夏の鉄道イベント 価格高騰も大盛況! ファン「願わくば」の声も
コロナ禍以降、鉄道各社は働き方改革や少子化での乗客減で本業の運賃収入が伸びないため、工夫をこらして鉄道ファン向けのいろんなイベントを打ち出しています。 【写真】のせでんビール列車のようす 夏に関西の各社が企画するドル箱イベントが「ビール列車」です。先陣を切るのは北摂を走る能勢電鉄。5年ぶりに「のせでんビール電車」と銘打って、7月30日(火)から8月1日(木)までの3日間にわたって開催しています。 キリンビール神戸工場直送のビールに地元のイタリア家庭料理店のおつまみ弁当がつき、川西能勢口~日生中央をゆっくり往復しながら2時間にわたって走ります。料金7000円(税込み)はなかなかのお値段なんですが、チケットは前売りの段階であっという間に売り切れとなりました。 この上を行くのが、滋賀県を走る近江鉄道の「近江ビア電2024」。8月3日(土)から9月1日(日)までの土日に計10回開催されます。こちらはキリンビール滋賀工場の5種類のビールが楽しめ、近江の名産を詰め込んだ二段重がついてきます。彦根~多賀大社の往復で、休憩を挟みながら約2時間のコースは、7500円(税込み)と強気ですが、こちらも日によっては満席となっている回もあるなど、予約は順調のようです。 兵庫県の粟生と北条町を結ぶ第3セクターの北条鉄道も「北条ビール列車」を、8月19・20・26・27日の土日に計4回運行します。同鉄道車両のロングシートの特性を生かしつつ、日替わりで歌謡ショーも展開されるこの企画。アルコール・ドリンク飲み放題、食品の持ち込みもOKで、料金は男性6000円、女性5000円と、最近では珍しく男女で料金設定を変えています。前回あたりから出演する各歌手にファンがつき、お座敷列車風の和気あいあいのムードもあり、7月23日時点で全列車満席(※キャンセルにより空きが出る場合ありとのこと)。 大手では、京阪電車が大津市を走る石山坂本線で「ビール de 電車」を8月2・16・23・30日の金曜に4回運行します。大河ドラマで人気の石山寺と坂本比叡山口を往復しながら、サッポロ生・黒ラベルと石山の人気総菜店「豆藤」の特製弁当が楽しめます。4700円(税込み)と、5000円を切る価格設定で、予約状況を見ると、こちらも完売のアナウンス。 コロナ前は各社とももう少し安かったと記憶しますが、これらのような「ビール列車」企画は、物価の高騰もあいまってどこも値上げを断行しています。 確かに仕事仲間や友人・家族らと列車内ではワイワイ飲むのは楽しいでしょうが、夜ですから車窓の景色は楽しめません。抽選会などが催されることはあっても、もっと『鉄分』を濃くしてほしい気もします。沿線や各駅にまつわるクイズ大会、現役車掌や運転士のここだけの話、休憩の駅で普段見られない場所の見学などあれば楽しいのですが……。 一方で、「ビール列車」企画以外にも、昨今では鉄道フアン向けのイベントが目白押し。中でも人気は、車庫を使っての運転体験会です。大阪・貝塚市を走る水間鉄道でも定期的に開催していますが、参加料は1万2千円。しかし毎回すぐに予約は埋まり、現時点で今年10月分までの状況も、すべて予約受付は締め切られています。 ちなみに、水間鉄道は、夏休み中、小学6年生以下の子ども向けの運転体験イベント「夏休みこども電車運転体験」も7月28日(日)と8月12日(月・祝)に開催。こちらの体験料は5000円(税込み、8/12分の応募も締め切り済み)です。 先日は阪神・近鉄と阪神ステーションネットが連携し、おもしろい親子ツアーを開催していました。7月14日(日)に行われたのは、題して「阪神・近鉄車庫巡りツアー」。阪神なんば線開業と阪神・近鉄の相互直通運転開始から15周年を記念する企画で、阪神の尼崎、近鉄の五位堂・名張・高安の4つの車庫をめぐり、貴重な体験や見学ができる9時間のツアーです。ただ代金は弁当代込みで大人1万5千円・小学生1万円。小学生と保護者の組み合わせが必須のため、最低でも2万5千円のセット販売に。なかなかの料金設定ですが、これも多くの親子が参加したようです。 また日本最大の路面電車・広島電鉄では、同社で走る旧京都市電1900形15両のうちの2両が引退するにあたり、7月14日(日)に千田車庫で有料の撮影会が行われました。京都と広島を合わせて67年間走り続けた人気の全15両が勢ぞろいし、ファン垂涎の撮影会となったのですが、参加費は午前の部が1万円、午後の部がなんと1万5千円なり!(※午後の部は記念につり革持ち帰りや、車内部品の入札を実施) ちなみにもう1つ、いま注目の鉄道イベントがあります。和歌山県のすさみ町がJR西日本・日本旅行と共同で企画したもので、ふるさと納税の返礼品としての、JRきのくに線「周参見駅1日駅長体験」です。 制服・制帽・自分の名前入りの名札を着用し、特急「くろしお」の出発合図をしたり、改札口での乗降客への対応を行ったりしたあと、同じ町内にある2駅も巡回。また普通列車に乗務して車内放送で沿線の観光案内も行いますが、営業中の電車での車内放送体験はおそらく全国初のはずです(※これまでは貸し切り列車など特別車両ではあった)。 体験日の前日はすさみ町内のホテルに宿泊し、朝は自動起床装置(指定の時間に体を持ち上げて起床する装置)の体験もできるというもの。9月29日、12月8日、来年(2025年)の2月2日の計3回で、各回1人のみ(満16歳以上)。さて、その寄付金額ですが……なんと50万円! すでに今年の2回分は売り切れとのこと。 鉄道ファンが個人で過熱撮影などをすることを避けるため、鉄道会社が仕立てる有料撮影会など、イベントは増えていますが、いずれも参加費が高騰しています。それでも、需要があるため、どれも満席の盛況ぶり。 ただし、これが続けば、学生や子どもたちのファンはついていけないのではと危惧します。願わくば、新たな鉄道ファンを増やすためにも、リーズナブルな料金で楽しめる企画ももっと増やしてもらえるとありがたいです。(羽川英樹)
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