無期懲役を狙って新幹線に乗り込んだ22歳の凶行、期待通りの獄中生活に「とても幸福」 死刑に次ぐ刑罰の意味とは
●「有期刑なら深い反省はなかった」
美達は同じ刑務所に収容されている無期懲役囚を観察する中で感じ取ったことを著書に記している。 <無期囚が仮釈放になる服役期間の三十年、三十五年という年月は、それだけを考えれば長い年月ですが、口を開けば娑婆のことばかりで、被害者と遺族について話すことはほとんどありません> では、美達自身は無期懲役に服する意味をどう考えているのか。 <物事の受けとめ方につき、複眼的、多様性が加わりました。また、仮に自分が正しく、相手に非がある場合でも、「ちょっと待て。世の中にはこういう人もいるのだ。ま、いいか」となる事が増えています。 「ま、いいか」は妥協的で大嫌いな言葉・態度でしたが、今はこだわりません。有期刑なら、社会で次にどうするのか、また野心マンマンになるのは明白なので、深い反省、省察はなかったのではないか、と捉えています> 社会に戻れることが確約されていない「無期刑」だからこそ、自身が犯した罪に深く向き合えている。美達の手紙からはそんな思いを読み取ることができる。
●性犯罪繰り返した囚人 無期刑は「死刑よりきつい」
無期懲役囚は今、ほとんどが塀の外に出ることがないまま獄死している。”終身刑”化しているのが現実だが、その中で開き直る者もいる。 西日本のある刑務所で服役する男性は、これまで性犯罪を繰り返してきた。刑務所に2度入り、出所して2年後、街で偶然見かけた女性を強姦目的で襲った上、命を奪った。 無期懲役刑について、彼は「死刑よりきつい」と話す。その理由が手紙に書かれていた。 <無期囚は仮釈(放)率が少なく、刑務所内で亡くなるか、出所後2年以内に亡くなる人がほとんどだからです。特に(今いる)刑務所には、私が生まれる前からおられる方や私が来てから、中で亡くなられた方などがいるので、そう思うのかもしれません。一般的な死刑と違い、無期懲役は時間をかけて行われる死刑であり、終身刑と同じだと感じています> その上で、過去の服役とは異なる受刑生活を送っていると明かした。 <これまでは有期刑でしたので、懲罰のことを全く気にしていませんでした。今回は無期刑なので、なるべく懲罰を受けないようにしようと思っています。そのかわり、仮釈放なんてないと思っているので、所長や監査官に対し、苦情を出したり、訴訟を起こしたりしています>
●無期懲役刑の意味、当事者は「効果につき疑問」
無期懲役刑は日本で、死刑という極刑に次ぐ重さの刑罰だ。その意味はどこにあるのか。 美達からはこう返信があった。 <よほどの覚悟がないと仮釈放には至らぬ刑(ただし、大半の芯がない腰抜けの者にはどうってことのない)です。という刑の反面、ほとんどの者は反省より社会に出ることのみしか眼中にない刑でもあり、効果につき疑問です。現実は更生、改心より懲罰、社会の保安上、獄に入れておく刑となっていますし、それが妥当です> ※この記事は弁護士ドットコムニュースとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。