2024映画「興収TOP10」で明らか浮いてる『変な家』 50億越え大ヒットの理由は?
『ドラえもん』『怪盗グルー』も超えたまさかの大ヒットホラー
いよいよ年末に入り、2024年のヒット映画を振り返る時期がやってきました。今年の興行収入ランキングをチェックしてみると、『名探偵コナン100万ドルの五稜星』や『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』という人気アニメをはじめ、シリーズ最終章の『キングダム 大将軍の帰還』、満島ひかりさん主演のノンストップサスペンス『ラストマイル』といった作品が上位を占めています。 【画像】え…っ?実際見てみたら「こんな変なの?」「廊下怖すぎ」 こちらがぱっと見でぞわぞわしてくる『変な家』の内部セットです(5枚) そのなかで異彩を放っているのが、3月15日に公開された『変な家』です。興行収入は何と50億円を突破しており、ダークホース枠の思いがけない大ヒットと言っていいでしょう。『映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)』(約43億円)『怪盗グルーのミニオン超変身』(約45億円)と、ファミリー向けで安定して稼いでいるアニメシリーズをも抑えているのが驚異的です。 オカルト専門の動画配信者が、マネージャーから購入予定の一軒家の間取りにつ不可解な点があると相談されるところから始まる本作は、もともとは2020年にWEBメディア「オモコロ」に掲載された記事で、その後「【不動産ミステリー】変な家」というタイトルでYouTubeにアップされ、2021年には飛鳥新社より物語を書き足した小説が出版されました。Web記事、YouTube動画、小説、マンガ、そして映画と、『変な家』旋風は大きなうねりとなってメディアを席巻したのです。 ただ、映画はレビューサイト「Filmarks」のスコアでは3.0と、正直高い評価ではありません(2024年12月25日現在)。原作からの大きな改変や、後半の「家の間取り」とはあまり関係ないストーリー展開など、強引さが気になる方も多かったようです。たとえば、クチコミでじわじわ人気が広がり、インディーズ映画としては異例のヒットとなった『侍タイムスリッパー』のような、映画ファンによるムーブメントではなかったのです。 おそらくYouTubeやTikTokをきっかけにして、普段はそれほど映画に接することのないティーンのライト層が、劇場に足を運んだのでしょう。タイトルの分かりやすさ、誰もが無関係ではいられない「家」という題材、公開日が春休みの時期だったことも、動員を増やした大きな理由に挙げられます。 また、ミステリー、ホラーというジャンル自体が、世代を超えて訴求力の高いコンテンツであったことも見逃せません。一般的にJホラーの火付け役は、1998年に公開された『リング』だと言われていますが、その後も『呪怨』、『仄暗い水の底から』、『犬鳴村』、『スマホを落としただけなのに』と、数多くの映画が作られてきました。 映画だけではありません。近年のTVではバラエティ番組を模したフェイク・ドキュメンタリーの『テレビ放送開始69年 このテープもってないですか?』(2022年)や、『イシナガキクエを探しています』(2024年)、ゲームでは『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』(2023年)や『ファミコン探偵倶楽部』の4作目『笑み男』(2024年)が話題を呼びました。今でもジャンルを横断して高い人気を誇るジャンルだからこそ、『変な家』のメディアミックス戦略は功を奏したと考えられます。 気軽にジャンピング・スケアが楽しめるアトラクション空間として、映画館をどのように活用していくべきか。『変な家』のヒットには、新しいマーケティングのヒントが詰まっています。2025年も『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』『近畿地方のある場所について』など、公開前から大きな注目を集めているJホラーが控えており、これらの作品がどれほどヒットするのか、要注目です。
竹島ルイ