年金月16万円・東北在住の70代父「東京の老人ホームに入居」…〈2ヵ月後〉40代長女が驚いた「父の激変ぶり」
岩手に住む父に「東京の老人ホームに入らない」と提案
女性が提案したのは、女性の自宅から車で20分ほどのところにできた「住宅型有料老人ホーム」。民間企業が運営する「有料老人ホーム」には大きく、「自立型」「住宅型」「介護付き」の3種が。「自立型」は基本的に要支援・要介護者は対象外で、食事や家事といった生活支援サービスが提供されます。「住宅型」は介護度の低い人がメインで、施設によっては自立の人も入居できます。生活支援サービスのほか、外部の介護サービスを受けることができます。「介護付き」は「生活支援サービス」と「介護サービス」がすべて組み込まれたもの。 気になるのは費用。厚生労働省の資料によると、「介護付き」で月額平均22万7,039円。介護サービスが含まれてない分、「住居型」はリーズナブルとされ、月額10万~20万円程度といわれています。 女性が勧めた施設は、充実の設備、また看護職員もいて安心。レクリエーションも盛んだとうたい、自立の人も入居可能とのこと。実際、入居者の1/3は自立している高齢者だといいます。 ――ここであれば、すぐに会いにもいけるし安心 ひとつネックになるのが費用。色々と充実しているだけあり、月額費用は20万円超え。女性自身、子どもの教育費に住宅ローンの返済にと余裕はなく、入居費用はすべて父親まかせとなります。綿密なシミュレーションの結果、年金月16万円ほどだという父親。手取りにして14万円程度だといいます。月々の不足額は7万円ほど。1年で80万円超、10年で800万円超、20年で1,600万円超……「うん、貯金でなんとかなるな」と父親。女性の弟や妹も首都圏在住ということもあり、東京に出てきたほうが安心と、父親も腹を決めて上京することになったといいます。 ――いつでも会いに行けるから、安心ね スープが冷めない距離に、高齢の父と娘……しかし、「近くにいれば大丈夫!」と誰もがなるとは限らないようです。
仕事が繁忙期で面会に行けず…2ヵ月ぶりに会った父は
後日談として、女性の父親が老人ホームに入居してから、しばらくは仕事が忙しく、なかなか面会にいくことができず、電話やラインで話すばかりだったと女性。事件は、繁忙期が終わり、入居後、初めて父親に面会に行った2ヵ月後。驚いたのが、父親の激変ぶりだったといいます。 ――どうしたの、お父さん! なんかすごく痩せたみたい 頬はこけ、顔色はどこかさえず……口うるさかった父親に、まったく覇気が感じられない。どうしたのか、父親に話を聞いたといいますが、最初は何も話してくれなかったといいます。それでも普段の状況を聞いていくと、「東京の人とは話が合わないんだ」とポツリ。 ホームは入居者もスタッフも和気あいあいとした雰囲気。しかし父親は自室に閉じこもり、ほかの入居者とはほとんど口をきかないといいます。最初は、父親も積極的にほかの入居者とコミュニケーションをとろうと努力していたといいますが、これまで住んできた世界が違うのか、とにかく話が合わず、会話に入ることができなかったといいます。そのうち部屋から出るのも億劫になり、食事も喉を通らなくなったといいます。 遠く離れて住む親子。高齢となり、老人ホームへの入居が選択肢になることも珍しくはありません。そのとき、慣れ親しんだ実家(親の自宅)近くのホームに入るか、それとも子の家から近いホームに入るか、大きく二択になるでしょう。 しかし、不慣れな地に引っ越してきた結果、体調を崩したり、病気等が進行してしまったりということも珍しくはありません。特に高齢者は、新しい土地への順応度が、若い人よりも落ちているもの。この近くに住むのが本当に最良なのか、それぞれ異なるでしょうから、しっかりと親子で話し合うことが重要です。 [関連資料] 一般社団法人ウェルネス総合研究所『高齢の親の健康サポートに関する意識と実態調査』 厚生労働省『令和元年度老人保健健康増進等事業 高齢者向け住まいにおける運営実態の多様化に関する実態調査研究』