「寄付金だけでも1億円以上」が集まった経験を生かして 群馬の実力校の指揮官が目指す「違う野球部の作り方」
センバツで優勝を果たした健大高崎。その後の夏も甲子園に出場すると、世代交代した秋も関東大会で準優勝を成し遂げた。2025年も引き続き、群馬の高校野球を引っ張る存在になるのは間違いないだろう。 【一覧】21世紀枠都道府県推薦校 そんな群馬には実力ある学校がひしめく。ゆえに上位進出は容易ではないわけだが、「健大さんや育英さんとは違う野球部の作り方で、いい結果が出れば、最高なんですけどね」と常磐の指揮官・金子繁監督は、笑顔をのぞかせながら語った。
地域も盛り上げられるようなチームを作る
常磐は、秋の県大会で初戦敗退だったが、夏の大会ではベスト16進出。少しさかのぼれば、2020年の独自大会でベスト8進出している。上位進出へあと一歩というところへ迫っている。そんなチームを金子監督は、2017年の秋から指揮を執っているが、先述した「違う野球部の作り方」とはどういうことなのか。 「この学校にお世話になることが決まった時から『地域に浸透させたい』というのを強く思っています。地域密着のチームは少ないですし、地元の人から『頑張って』と応援してもらうだけでも、選手は励みになります。それが大事かなって思っています」 金子監督が就任する以前、常磐は遠方の選手が多く、地元の選手が少ない。現在とは真逆の構成だった。それもあってか、常磐のすぐ近くに中学校があるにもかかわらず、そこの選手たちが入部してくるわけではなかったという。
実際、チームを強くするのに、実力のある中学生を集めるのは方法の1つ。結果的に、遠方の選手が増えてしまうのは、以前の常磐に関わらず、全国あらゆるところでも見受けられるケースだ。金子監督も「そういった考え方もあるんでしょう」と前置きしながらも、地域密着の重要性をもう一度強調する。 「けど、地域や学校の実態などの先々のことを考えた時、まず地域から本当に応援してもらえる、盛り上げられるようにすることが大事だと思うんです」 目先の結果だけではなく、もっと先々のことまでを見据えた地域密着のチーム作り。指導者として長いキャリアのある金子監督だからこその視点とも思える。が、前任の太田市商(現市太田)でセンバツに出場した経験も関わっているようだ。 「地元の方々が喜んでくれるんですよね。歴史の浅い学校でしたけど、寄付金だけでも1億円以上のお金が集まったんです。甲子園でも、ベンチにいてもスタンドの方々の声援や校歌が聞こえてくるんです。そういうのを聞いて、地元の支えの大切さを感じたんですよね」 当時、あるメディアから、「学校を中心にコンパスで円を描くと、出場選手の自宅がほとんど入っていた」ということで、町内野球とも称されたという。それだけ地域密着のチームを前任校で作り、甲子園まで出場できた経験を、現在の常磐でも作っているだけなのだ。