「寄付金だけでも1億円以上」が集まった経験を生かして 群馬の実力校の指揮官が目指す「違う野球部の作り方」
と同時に、金子監督はやりがいを感じている部分もあるという。 「私の教え子がNPBだけではなく、社会人や軟式など様々な野球界で頑張っているんですよ。選手だけではなく、指導者として地元の子どもたちに野球を教える。そうやって地元に戻ってきて、また地域のために頑張ってくれる。それこそが地域密着のチームの出来ることですし、やりがいを感じますよね」 もちろん野球に限らず、違う世界に進む教え子もいる。それでも、「遠征時にバスの運転をやってくれた」と、できることでチームに還元してくれる人もいるという。だから、「兄を前任校で教えて、弟がここに来てくれた」と金子監督を慕って、預けてくれる家庭もあるという。 実際、チームの主将である小倉翔哉捕手(2年)は、「父が中学生の時、金子先生にお世話になったので、常磐のことを伝えた時に、『できれば行ってほしい』というのもあって決めました」という。去年の世代も、「3、4人ほどは、お父さんが金子監督の教え子だった」とのことだ。 金子監督が作る地域密着のチーム、時間をかけながら作り上げていくことにはなる。それでも近い将来、群馬での屈指の実力校になることを期待せずにはいられなかった。
野球を好きになってくれる選手たちともに
そんな金子監督だが、教え子とのかかわりが強いのは、地域密着だけはないという。そこには「野球を好きになってくれたから、繋がりが出来ているんだと思います」と話す。 とはいえ、野球を好きで居続けるのは、口にするほど簡単ではない。特にオフシーズン、厳しい練習に取り組むことが増えてくれば、モチベーションを維持することは難しい。そこを金子監督は、どういった工夫をしているのか。
「練習が終わったあと、『今日、グラウンドで何を拾った』って聞きますね。受け身で取り組んでいたら、『練習終わったな』で終わっちゃいます。けど、『声を出す大切さを知った』とか『こうやって打てた』とか、グラウンドに落ちているヒントを拾ってもらいたいんです。だからヒントだけを出して自分で見つけてもらいますけど、そのためにチームでは『俺がやる』って言葉を掲げています。 1人1人が自覚をもってプレーしてほしいというのもあるんですけど、個人のプレーの結果が積み重なってチームプレーとなって、チームの勝敗になるので。だから、スローガンということで『俺がやる』っていう言葉を掲げています」 その点について、小倉主将も「細かな指示、提案をはっきりと言ってくださるので、課題が見つけやすくて、考える習慣をつきました」とありがたいように感じている。 そんな今年の常磐だが、小倉主将いわく「盛り上がれば流れに乗れるけど、ミスが出てしまうと続いてしまう」とのことで、チームの雰囲気づくりに課題がある。練習から雰囲気づくりを意識するのはもちろんだが、どれだけ維持できるかがポイントのようだ。
そのためにも実力をつけ、自信を深める。そうすれば練習の雰囲気も高まり、より『俺がやる』と思って取り組む、と小倉主将は考えている。そこは金子監督も「声掛けをするようにしています」と話し、要所で声をかけてモチベーション向上を図っているという。 細かな取り組みだが、丁寧に指導を重ねながらチームを強化する今年の常磐。小倉主将は、「春に向けて、各々の課題はもちろん、チーム全体の課題もなくしていき、3回戦以上に行けるようにしたい」と春以降への意気込みを語った。 厳しい冬を越えて、どんなチームへ成長を遂げるのか。『俺がやる』精神をもって、常磐が春以降に躍進することを期待したい。