テレ東23歳プロデューサー牧島俊介が語る、地上波デビュー作、テレビならではの強み
牧島が考える、テレビらしい強み
―それにしても「ナキヨメ」の様な説明しづらい番組が企画通過するのは、よく言われるかも知れませんが「テレ東らしいな」と思いました。 牧島:ただ、実は「ナキヨメ」は1年目からずっと出していた企画ではあるんです、ずっとこれをやりたかったので。とはいえ、自分で言うのもアレですけど、ちょっと企画書で見える、わかりやすい企画ではないと思うんですよね。なので、最後は企画書の書き方をだいぶ変えました。バラエティとして面白いっていうより、「こういう廃墟があって怖がられてるんですけど実は感動できる良い話もあるんです」という情報性のあるところを見せた方が、企画書上はすごい見やすくなるので。 ちょっとだけ話がズレちゃうんですけど、大学4年生の時に、かが屋さん達と結構大きめにライブをやったんですよね。そうしたらそれが、チケットが250枚以上売れて、配信も売れて。その経験から何となく、自分がやっていくスタイルが見えたんですよね。周りのテレビの人を見ていて思うのは、入社してから色々経験していく中でやりたいものを見つけていくっていうパターンが多い気がして。でも自分の場合はそれが決まっていたから、企画自体はブレずに出し続けられたんだと思います。柴田理恵さんでこの企画をやりたいというのもずっと考えていたことだったので。 ―スタッフを見ると、作家に鈴木遼さん(「大悟の芸人領収書」「奥様ッソ」など)、牧島さんと同じく20代の後藤達弥さんがクレジットされています。今回自身の制作チームを作るにあたってもゼロからのスタートだったと思いますが、ここもある程度は当たりをつけていたんでしょうか? 牧島:鈴木さんに関しては、元々好きで。さっき話した、大学生のときにやったライブに招待してたんですよね。その時は来られなかったんですけど、そこから連絡を取るようになって。後藤さんも、自分が学生時代から付き合いがあったので、その2人は自分の中では一緒にやろうと決めていました。 制作会社はテレパックさんに頼んだんですけど、「ナキヨメ」はドラマが結構肝になってて。でも自分にはドラマのノウハウが全くないので、ドラマをとにかくちゃんと撮っていただけるところということでお願いしました。キャスティングも、最初の方はテレパックさんが柴田さんと交渉してくれましたね。おかげで、自分はバラエティに相当する箇所に集中できました。 ただ、やっぱり実際にプロデューサーとしてやってみてすごく思ったのは、年齢のこととかは関係なく、論理的に説得しなきゃいけないんだなというのは学びました。「こうして欲しいんだ」ということをちゃんと説明できないことが多かったんですよね、感覚で言い過ぎているというか。例えば柴田さんがシャーレを持っていても純粋に泣ける、っていうことが、自分としては成立してるんですよ。でもそこを説得できなかった時もあって。最終的にみなさん「牧島くんが言うならそうなんだろうな」って手探りでやってもらったんですけど、これからはもっと自分の感覚というのをしっかり言語化しないといけないな、というのは反省点ですね。 ―実際にプロデューサーとして制作に携わった上で、クリエイター目線でテレビの強みってどこだと思いますか? 牧島:まず柴田さんのキャスティングです。もう起用することそれ自体が、テレビじゃないと出来ない。柴田さんが感動すると泣くって、これはテレビが歴史的に築き上げてきたものじゃないですか。言わば、みんなで大事にしてきたがもので、それは僕のクリエイティブでも何でもなくて、そこを前提にできたものっていうのがまずありますよね。そして再現ドラマを本気で撮って、それを見て柴田さんが涙を流す、これが結構テレビの技術の結晶ではあると思うんですよ。お互いが本気出すっていうんで、柴田さんも本気で心を寄せにいくっていう、これはテレビにしかそもそもできない。 それと、やっぱりお笑いライブをやろうとしたら、ジャンルを言わないとお客さんは来てくれないですよね。「これはお笑いなんですよ」って。でも今回の番組って、同僚の社員さんに見てもらって反応をもらったりもしてたんですけど、いろんな解釈があって。柴田さんが泣き出した瞬間にビビっときて笑い始めて最後まで観てくれた人もいるし、話に感動してお清めもするっていい企画だなって思って最後まで観た人も実際いるんですよ。ホラーって言ってくれた人もいるんで、それくらい色んな解釈ができるように作ってて、それを規定しない方が面白い。それがテレビらしい強みかなと思うんです。 ―なるほど。では最後に伺います、次にやってみたい企画や目標がありましたら教えていただけますか。 牧島:やっぱりお笑いやバラエティが好きでテレビ局に入ったというのはあるので、もっと芸人さんと企画段階から膝を突き合わせて番組を作りたいですね。よく、くりぃむしちゅーの有田さんが、企画会議から入るじゃないですか。あのパターンでどんどん作ってみたいなと思います。それこそ、学生時代にライブに出ていただいた、かが屋さんとかと一緒にコント番組作れたらめちゃくちゃ嬉しい。でもそのためにはまだまだ実績を積み上げていかなきゃいけないので、まずはそういう企画を出すに値する人間になるっていうのが目標ですかね。 <番組情報> 「ナキヨメ」 放送日時:2024年9月30日(月)深夜24時30分~25時 放送局:テレビ東京 出演者:柴田理恵、中谷(マユリカ)
Carlos Yabuki