大阪発の印刷キット台湾で人気 若者ら手作りアートに挑戦
簡易印刷キットが台湾で若者たちに人気
大阪発の簡易印刷キットが、台湾で若者たちに人気を呼んでいる。この印刷キットはレトロ印刷JAM(大阪市北区)が独自開発した「SURIMACCA(すりまっか)」。発売開始に合わせて今春、レトロ印刷JAM台湾を開設したところ、ワークスペース工房にファンが詰めかけ、自身でアート作品の制作などに挑んでいるという。
台湾初のシルクスクーン体験工房が話題に
商品名の「SURIMACCA」は、大阪弁の「刷りまっか」に由来する。シルクスクリーン技法によって、トートバッグやTシャツにお好みのデザインを印刷できるが、従来型キットを改良した「SURIMACCA」では、印刷したい作品の大きさに応じて印刷サイズを自在に調節することが可能になった。 同社では製造費を調達するため、市民から小口融資を募るクラウド・ファンディング方式を採用したところ、予想を上回る応募があり調達に成功。投資者に優先的に発送したほか、6月からは一般販売も開始した。 「SURIMACCA」販売開始に向け今年3月、台北市内にレトロ印刷JAM台湾を開設。大阪本社と同様、シルクスクリーンによる印刷を体験できるワークスペースを設置したところ、開設当初から若者たちが詰めかけている。台湾駐在の橋本香さんが所用で大阪本社に戻った折に話を聞いた。 「台湾でシルクスクリーン印刷を体験できる場所は、当社が初めてだそうです。台湾の若者たちはアートへの関心が高い。シルクスクリーンではどんなふうにして何ができるのかと、問い合わせが殺到しています。すでに毎週のようにワークスペースにやってきて、オリジナルトートバックを作ってネット通販で販売している人がいます」
日本と台湾の作家たちの交流を活発に
レトロ印刷JAM台湾では日本人作家の作品を紹介するほか、国際的絵本コンクールに入賞した台湾作家の講演会を開催するなど、多彩な活動でクリエイターたちを支援している。 「何か手作りしたい、できれば作家になりたい。プロアマを問わずクリエイターとして自己表現したいという意欲の高さは、日本も台湾も変わらない。これからは日本と台湾の作家たちの交流を推進したい」(橋本さん) 同社はシルクスクリーンや昔懐かしい謄写版(ガリ版)など、孔版印刷技術による印刷事業に専門特化。文字や絵柄がずれたり、かすれたりする孔版印刷の短所を「持ち味」ととらえ、手作り感覚を楽しむ新しい印刷文化を提案してきた。「SURIMACCA」は、個人が家庭でもアート作品を手作りできるステージを切り開いた。 台湾での確かな手応えをもとに、同社は海外ネットワークの拡大をうかがう。山川正則社長は「台湾が軌道に乗ったら、ヨーロッパへ進出したい。シルクスクリーンの伝統のあるヨーロッパで、『SURIMACCA』がどのように活用されるか楽しみだ」と意気込む。かすれやずれを楽しむ感覚が世界標準になれば、愉快ではないか。詳しくはレトロ印刷JAMの公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)