「他人の才能に依存したくない」。『TOKYO VICE』で飛躍した笠松将が役柄問わず引き受けて見えてきた景色
窪塚洋介の「攻撃力」に圧倒された
―笠松さんが演じる「佐藤」との直接的な絡みとしては、彼の上司であり組長である菅田俊さんの存在が、今シーズンも印象に残りました。 笠松:いやあ、菅田さんのこと、僕、大好きです(笑)。マジですごいんですよ。普通の役者の芝居って、本来の自分の上に、外向けの自分をさらに乗っけるというか、実際の自分を120%、150%、200%にしてからカメラの前に立つじゃないですか。でも、菅田さんはもちろん、『TOKYO VICE』に出ている俳優たちは、カメラが回ってないときの姿も、ものすごく美しかったりする。だからこそカメラの前に立つ人たちなんだなって、当たり前のことを思ったりして……。 ―さらにSeason2では、「佐藤」の兄貴分として、窪塚洋介さんが「葉山」という役で登場します。 笠松:そう、窪塚さん(笑)。窪塚さんは、もちろん大好きな俳優というか、昔からずっと好きで作品も見てきているから、どんな感じの人なんだろうと思っていて。クランクイン後、ご挨拶させていただくタイミングがあって僕のほうからと思っていたら、窪塚さんから挨拶にきてくれたんですよ。その瞬間に、僕のなかで、いろいろな価値観が崩壊したというか……。 ―どういうことでしょう(笑)。 笠松:何て言えばいいんだろうな……たとえば、20代の頃とかって、尖っていれば尖っているだけカッコ良いみたいな価値観があるじゃないですか。実際、僕もそう思っていたようなところがあって。それで、言葉遣いだったり所作だったり、それこそ服装だったり身に着けるもので、尖った自分を演出していたようなところがあったんですよね。なぜなら、それが自分の「攻撃力」だと思っていたから。 だけど、本当に尖っている人ってそうではないというか。窪塚さんって、じつはすごく物腰が柔らかくて、丁寧な方なんです。だけど、カメラの前に立つとキレキレで、ものすごい存在感がある。つまり、何て言うのかな……僕が「攻撃力」だと思っていたものは、じつは自分を守るための「防御力」に過ぎなかったというか。そういうことを窪塚さんから、あらためて教わりました。 ―笠松さん演じる「佐藤」という役は、年齢的にも状況的にも、笠松さん自身にとって共鳴する部分も多かったのではないでしょうか。ある種の「ハマり役」というか。 笠松:そうですね。たしかに、自分の現状とマッチしている役と言えるかもしれません。でもそれより、この「佐藤」という役に関しては、まわりのみんなが僕に期待してくれていたことが大きいと思うんです。 それは、現場の空気もそうですし、そのあと実際にSeason1を見てくれた方々が僕に期待してくれているのもわかったので。重圧にもなったけど、それが翼となり、僕をさらに高く飛ばせてくれたように思います。 ―ちなみに、『TOKYO VICE』と同じ2020年の末から配信がスタートしたドラマシリーズ『ガンニバル』で、笠松さんが演じて好評を博した「後藤恵介」という役も、「佐藤」と同じく主人公に対抗する組織の若頭的なポジションでした。 笠松:たしかに、共通するところは、何かあったのかもしれないです。ただ、それは年齢ではなく、「現状に疑問を持ちながら、それでも前に進む勇気と、その筋力がある」という部分だと思います。 『TOKYO VICE』の「佐藤」は、旧態依然とした組織のなかで、自ら未来を切り開いて新しい価値観を打ち立てようとしている人間です。だからこそ、僕もそのキャラクターに憧れたし、みんなも期待してくれたのではないでしょうか。