「他人の才能に依存したくない」。『TOKYO VICE』で飛躍した笠松将が役柄問わず引き受けて見えてきた景色
アンセル・エルゴート、渡辺謙、レイチェル・ケラー、菊地凛子ら、日米のスターキャストを擁した、WOWOWとMax(旧HBO Max)の日米共同制作によるドラマシリーズ『TOKYO VICE』。2020年の春に放送・配信され、国内外で高い評価を集めた本作における好演で一躍その名を国際的に知られるようになったのは、やはり笠松将だろう。俳優として本格的に活動し始めてから10年あまり。本作の出演をきっかけに2022年には海外のエージェントとも契約を結ぶなど、ここへきて急速に開けてきた「未来」を前にして、彼はいま、どんなことを感じているのだろうか? 選ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり。『TOKYO VICE』待望のSeason2の放送・配信を目前に控えたいま、笠松将に話を聞いた。 【画像】笠松将
『TOKYO VICESeason2』は、「大人が本気で遊んでいる」のを感じた
―2020年の春に『TOKYO VICE』のSeason1がアメリカ、そして日本で放送・配信されました。その後は、作品そのものに対する反響はもちろん笠松さん自身についても、国内外から大きな注目が集まったのではないですか? 笠松:そうですね。『TOKYO VICE』という作品に参加できたことは、自分にとっても、すごく大きなものでした。特に、この作品が僕に海外を視野に入れる機会を与えてくれたことは、すごく大きくて。というのも、それまでは、まったくそんなつもりはなかったんですよね。 ―そうだったんですか? 笠松:本当に、まったく興味がなかったというか、ある意味「同じ」と思っていたかもしれない。「いまの時代、良い作品をつくれば国内とか国外とか関係なく届くだろう」と思っていたところがあって。だからいろんなものに対して、以前よりもこだわるようになったというのはあるかもしれないです。 ―どんなことに対して、こだわるようになったのでしょう? 笠松:自分の芝居についてはもちろんですけど、今日この取材でどんなことを話そうとか、そういうことまで。ここで僕がお話したことが、どんな人たちに、どのようなかたちで受け止められるかわからないし、それがひょっとすると10年後の自分につながってくるかもしれないじゃないですか。すべてに対して、そう思いながら臨むようになりました。 ―ということは、Season2の制作が正式に決定して再び撮影に臨む頃には、笠松さん自身の心境もだいぶ変化したということですか? 笠松:正直、Season1に対する向き合い方とSeason2に対する向き合い方は、僕のなかではぜんぜん違っていました。Season1は、「お客さんとして」ではないですけど、海外のことなどほとんど何も知らないまま、素晴らしいクルーと俳優たちのなかにいきなり飛び込んでいったので。 言葉の問題もありましたし、もうわけもわからず、とにかく必死にやっていたようなところがあったんです。ただ、今回のSeason2に関しては、僭越ながら自分がある程度、まわりを引っ張っていくような存在にならないといけないんじゃないかと思って。そういう責任感と、それに伴う緊張感みたいなものを常に感じていました。 ―実際『TOKYO VICE』の物語的にも、笠松さん演じるヤクザの若きリーダー「佐藤」はかなり重要な役で、彼の行動によって全員の運命が変わっていくようなところがありますよね。 笠松:そうですね。Season2では、さらにそういう役どころになっていると思います(笑)。僕自身、今回この「佐藤」を演じているときは、ずっと「全能感」みたいなものがあったんですよね。この役は自分にしかできないというか、「これ以上のものはないでしょう」っていう。もちろん、ほかの出演者の方々に比べると役者としての知名度はまだまだ低いですし、それ以外にも足りないものはたくさんあるけど、「芝居」という部分に関してだけを見ると、「これは、誰も超えられないでしょ?」って。 ―Season1の頃と比べると、かなり心境の変化があったわけですね。 笠松:そう思いながら、ひと足早くSeason2を全話見させてもらったんです。……そしたら、Season1以上に、大人の俳優たちが本気で遊んでいる感じがして。先輩たちのお芝居を冷静に見ながら、「ちょっとヤバいぞ、これ……」と。 本当に、みんなすごいんですよ。いつの間にか、自分が出ているシーンはスキップしつつ、ほかの方々のお芝居を夢中で見ていました(笑)。