情熱的なファンと共に快進撃を続けるトルコ。“魂の力”が蘇った選手たちが魅せるビッグプレー【現地発コラム】
「ファンタスティックなセーブ」
トルコは情熱の国だ。かつてベシクタシュ、フェネルバフチェらトルコクラブで指揮を取ったことがあるクリストフ・ダウムがこんなことを言っていた。 【動画】それを止めるか!? トルコGKギュノクのスーパーセーブ 「それぞれの国や地域にそれぞれのサッカーがある。トルコで指導者をするときには、極端に言えば90%の情熱と10%の戦術指導が重要になる」 追い込まれたときこそ大きな力を発揮するのが本来のトルコメンタリティ。近年そうしたトルコらしさが影をひそめる時代が続いていたが、今回のトルコ代表には伝統的な“魂の力”が蘇ったように感じさせられる。 決勝トーナメント1回戦で対戦したのはオーストリア。グループリーグではポーランド、フランス、オランダと同組ながら首位で突破し、特に3戦目のオランダ戦は相手に息つく暇を与えないほどのハイプレスの連続で、ゲームの主導権を握り続けた。そのパフォーマンスのすばらしさに様々な識者から称賛を浴びていた。 一方のトルコは、チームの中心であるキャプテンのMFハカン・チャルノハールが累積警告で出場停止。また3月の親善試合では1-6で完敗を喫しており、下馬評では圧倒的に不利だと見られていたが、ふたを開けてみると、試合を優位に進めて2-1で勝利した。 得点はどちらもセットプレーから。今大会セットプレーからの失点がゼロだったオーストリアに対して、鋭く精度の高いキックで2点をアシストしたのが18歳のアルダ・ギュレル。この場面だけではなく、1試合を通してスキルフルなプレーの連続で数多くのチャンスメイクに絡んだ。 「アルダはファンタスティックなパフォーマンスを魅せてくれた。何よりもすごく走って、チームのために戦った。誇りに思う活躍だった。もっともっと成長できる」 試合後の記者会見で、トルコ代表のビンツェンツォ・モンテッラ監督はその活躍ぶりに称賛を惜しまなかった。 智将ラルフ・ラングニックが率いるオーストリアも押されっぱなしではなかった。後半には2トップへ変更し、前線の起点を増やしてきた。トルコが押し込まれる場面も増えてくるが、そこで立ちはだかったのが、GKのメルト・ギュノクだった。 51分、フリーで抜け出したマルコ・アルナウトビッチとの1対1を鋭い対応で止めれば、何より試合終了間際の反応が素晴らしかった。左サイドから送られたクロスにクリストフ・バウムガルトナーがフリーでヘディングシュート。完全に逆を取られたかに思われた次の瞬間、ギュノクは身体を伸ばしてこのボールを指先ではじき出した。 オーストリア選手が頭を抱えたこのシーンのゴール期待値は0.94。つまり100回このシーンがあったら、94回は決まる確率のシュートを止めたのだ。 モンテッラはその活躍に目を細めた。 「ファンタスティックなセーブがあった。彼にとっても、トルコにとっても喜ばしいことだ。最後の最後であんなプレーを見せてくれたことにおめでとうと伝えたいよ」 相手のオーストリアFWミヒャエル・グレゴリチュも「ピッチ上で見たセーブの中で1、2を争うほどのハイレベルなセーブだった」と驚きとともに、そのセーブを称えた。
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